岩穴集落で「火様」を守り続ける「里山cafe分福茶釜」【七尾市】

のとルネアンバサダー、グルメ担当とっちです!

伝統と文化を守りつつ、里山の自然を活かしたカフェでこだわりのコーヒーを飲みませんか?

景観豊かな里山のカフェ

石川県七尾市中島町にある「里山cafe 分福茶釜」さんを紹介します。
山の上にあると聞いていて、どんなところにあるのだろうとわくわくしながら出掛けました。
到着するまでの道中、長閑な風景が広がります。


緑の綺麗な苔がブロック塀にぎっしりと敷き詰められ生息している景色はとても風情があります。
川が流れるほとりの周りは、春の花や山菜などが芽を出し、色々な木々が揺れて鳥の鳴き声も聞こえます。


上りつめると、やがて「分福茶釜」の看板が見えます。
一番高い位置に堂々と建つ古風な建物が店舗のようです。


早速中に入り、オーナーのお話をうかがいました。
こちらのcafeとギャラリーは、築200年の納屋をリノベーションしたものだそうです。

古民家をリノベーション!ゲストハウス「古民家 岩穴」

屋外へ出ることなく行き来のできる母屋は、江戸中期の建物で、約270年前の造りです。
こちらは「古民家 岩穴」というゲストハウスで、民泊できるようにリノベーションされてます。

当時、山の家は冬はとても寒く、母屋と納屋は屋内で行き来ができるように造られたとのことで、
昔の生活の知恵が息づいていました。
こちらのオーナー森田孝夫さんをご紹介します。
埼玉県出身で、医学博士であり大学病院の教授をされていました。
なぜ大学教授がこの地へと…
ここは、奥様のご実家であり、以前は、田植えや稲刈りの時期の手伝いに、また遊びにとよく来られていたそうです。
その頃は、まさか自分がこの地で民泊やcafeをすることなどとは思っていなかったそうです。
そのいきさつをお話ししていただきました。


写真は、森田孝夫さん、奥様、奥様の妹さんです。
3人で切り盛りされています。

 

「まんが日本昔ばなし」演出・作画の又野龍也氏

森田さんは、この場所を皆さんが集まれる場所にし、自然の素晴らしさの魅力を伝えたいと思われたそうです。
そのために、分かりやすいようにと漫画で伝えることにしました。
前々から友人であり親交のある、又野龍也さんにお願いされました。又野龍也さんは、水墨画家で絵画活動のかたわら、皆さんよくご存知のテレビ番組「まんが日本昔ばなし」の演出・作画・監修を長年にわたって担当されていました。
この地に昔からから伝わる岩穴の郷の魅力をわかりやすい絵にしてもらおうと依頼しました。

その絵がフレームに入り展示されています。


大正末~昭和初期のころの、自然と一体となった田舎の生活が描かれています。
実際にこの場所で遊んでいた様子や、囲炉裏を囲っていた様子なども絵になっています。

 
絵にしてあらわすことで、その当時の様子、昔ながらの生活様式、伝説といわれる話などを今の人たちにも伝えたいという森田さんの願いが込められています。
実際この絵をみると、当時のほのぼのとした様子がうかがわれて、心があたたかく、じんわりするような幸せな気分になりました。
昔は自然や動物などとも上手に共存していたんだろうな、などと大切なことを思い出させてもらえるような気もしました。

「火様」がいる岩穴(いわな)集落

もともとこの集落は岩穴(いわな)という集落です。
最盛期は12軒あり、現在は5軒あると言うことです。
集落の裏山には知る人ぞ知る場所が…
びっくりするほど大きな岩が居座っており、その上にけやきの大木がぐるりと根を張る不思議な風景があるそうです。
その写真が展示されています。


また、この辺りは岩穴集落に伝わる昔話に登場するムジナの住みかだという説もあるそうです。
ちなみにムジナとは、主にアナグマを指すそうですが、時代や地方によってはタヌキや狐などを区別なく指す場合もあったようです。「同じ穴のムジナ」ということわざがありますが、タヌキや狐がアナグマと同じ穴で生活することがあることから、関係がないように見えて実は同類という意味になったという説もありました。


森田さんの奥様の御名字は、岩穴さんです。
明治8年に、法律によりすべての人が名字を持つようになった時、ご先祖が岩穴集落に最初に住みついた家であったため、集落の人々の了承のもと、岩穴と名乗ることになったそうです。
「郷愁の里・岩穴の至宝」と呼ばれるこの場所の岩穴集落は、昔から仕事は林業が中心でした。
岩穴集落の家々は自分の山から切り出した木材で天井の高い大きくて丈夫な家を造りました。
1日の仕事を終えると囲炉裏を囲んで楽しい団らん。


囲炉裏で燃える火は「火様」と言って、300年以上の間、一瞬たりとも消すことなく大事に守り続けてきました。
「火様」には、先祖の魂が宿っていて、家の守り神であると考えられていました。
しかしこの風習は次第に廃れ、時代が過ぎるにつれて岩穴集落の家々で絶やさず守ってきた火様も、中屋家の囲炉で燃える火様だけとなりました。
唯一中屋家だけで火は燃えつづけました。

「火様」を守り続ける森田さん

火様を守ってきた中屋家では、ご主人が亡くなってからは、奥様の好子さんが命の続く限り火様を守ろうと決めたそうです。
寝る時は「休ませてもらうね」と囲炉裏に向かって合掌し、朝がくると消えないように灰をかぶせておいた種火で薪を燃やす毎日。

やがて好子さんも歳をとり、体調崩し入院してからは隣の岩穴家で火を預かることになりました。
これが、森田さんがこの場所に移住されるきっかけになったそうです。
中屋家から火を預かった森田さんは、「なんとかしてこの火を将来ずっと残していきたい」と考えました。
そこで「古民家で安心安全に火を燃やし続ける」装置を作ることにしました。
試行錯誤の上、出来上がったのがスウェーデン製の薪ストーブを利用したオリジナル装置です。
鋳物でかなり重さもあり、地震でも倒れません。


最長2週間燃やし続けることができるオイルランプを特注で作り、さらに安全のため、薪ストーブの中に設置し燃やすことにしました。
また、万が一ランプの火が消えた時のことを考え、オイルランプを2個設置したそうです。
そして、ネットワークカメラを設置して火様を24時間見守っています。
形は違っても昔の囲炉裏文化であった「火様」を300年以上もの間家の守り神として燃やし続け今も大事に受け継いでいらっしゃいます。
火様を預かったのが2016年5月4日。やがて丸5年になります。
大切な思いで守り続けているその火様も、今では色々な所からの要望があるそうです。
七尾市にある山の寺寺院群本延寺の催し事には、御本堂のろうそくに点火(専用にランプに移して持って行く)したり
また、和倉温泉でのイベント前に式で点火される時にも大切に火様を運び、点けているとのこと。
とても大事な役割を果たされています。
私もこのお話を聞いた時にはとても感動しました。
現在、民泊を受け入れている母屋は今でも囲炉裏が残されています。


民泊ではその場所ではちめ(全国名ではメバルという魚)・汁物・焼きおにぎりなどを出されるそうです。

cafe分福茶釜のこだわりコーヒー


こちらは、こだわりあるcafeだとお話される森田さん。

☆分福昔のコーヒー☆
※予約が必要になります
コーヒーフィルターが発明される前(1800年以前)、14世紀から飲まれていた古い時代のコーヒーを再現。
ここで良質なものを提供したいとの思いでいらっしゃいます。
オーナーの解説と共に楽しめます。
所要時間 / 1時間
1名様 / 1500円
①「300年前コーヒー」コース
現在の淹れ方では味わえないコーヒー本来の複雑で豊かな香りと味を体験できます。

 

②「トルココーヒー」コース
コーヒー豆を極細挽きにし(ココアみたいに細かい粒子にし)香辛料と共に煮だすと言う伝統的なトルココーヒー。
2013年無形文化遺産としてユネスコに登録とのこと。
またカップに残ったコーヒー残渣でコーヒー占いもされます。

 

こちらはcafeの2階の季節の移り変わりが見える、素晴らしい眺めの特別な場所で味わう事ができます。
他には、ブラジルの森林の中で自然栽培された無農薬の「森のコーヒー」などが楽しめます。

ハラールフード サムサ


ジャパンテントで全国の留学生を受け入れ、石川県の文化や日本の家庭を味わってもらうことに携わって5年。
そこで出会ったイスラム教の方々にも食べていただけるものということで、ハラールフードのサムサを提供することになりました。
中央アジア出身の店主が本場のレシピで作る、ハラールフードを求める方に人気のパン屋さん、埼玉のシルクロードベーカリーシェルさんから仕入れていますので、安心して食べていただけます。
このサムサは、cafeのメインメニューとなっています。
なかなかこのあたりでは味わえないものですので、イスラム教の方でなくても、ぜひ味わってみてください。


◉軽食メニュー
・サムサ     …600円
・かぼちゃサムサ …600円
・チキンパイサムサ…1000円
・ピザ      …600円
◉スイーツメニュー
・シフォンケーキ
・ガトーショコラ
・チーズケーキ  …各400円
※お好きなドリンクで100円引き
◉コーヒー
・森のコーヒー(ストレート)
・里山コーヒー(ブレンド)
◉飲み物
・ソフトドリンク各種(メニューは2021年4月現在の物です)

当時の里山の原型をそのままにした「分福茶釜」でゆっくりと心を癒しながら雄大な景色と空気を感じてみてください。
きっと素敵な時間になると思います。

最後になりましたが、この土地で有名な中島菜は、※岩穴菜→川内菜→中島菜の現在に至るそうです。

 

【里山cafe 分福茶釜 店舗詳細】
【住所】

〒929-2201 石川県七尾市中島町河内モ22

【電話番号】

090-1651-1870

090-4741-4447

【営業日】金曜・土曜・日曜・祝日(12月25日~1月4日休業)

電話で営業を確認することをオススメします。

Facebook、ブログ、HPでも営業日をご確認いただけます。

【営業時間】10:00〜16:00

【駐車場】店舗前と周辺に誘導してくださいます


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