
※令和7年7月12日(土)に再開されることとなりました。
再開にあたり美術館を取材させていただきました。
七尾の海を見渡すことができる丘に、ひときわ目立つ少し変わったデザインの建物!
石川県能登島ガラス美術館のご紹介です。
Contents
再び輝きを取り戻す能登島ガラス美術館の今
あの日、心を痛めた令和6年の能登半島地震。
大好きな能登は、そして美しいガラスアートが待つ「能登島ガラス美術館」は大丈夫だろうか…?
そんな心配をしながら、能登島ガラス美術館を訪ね、関係者の皆様にお話を伺ってきました。
最小限にとどまった建物の被害
ガラスの美術館と聞いて、地震の被害はさぞ大きかったのでは…と、少し緊張しながら訪れました。でも、目に飛び込んできたのは、以前と変わらない美しい建物。
「固い地盤に守られたのか、建物の被害は壁の一部剥落や板ガラスの破損など、内装レベルの最小限に食い止められたと思いますよ」と伺って、まずはほっと胸をなでおろしました。
ただ、再開館への道のりは平坦ではありませんでした。一番の悩みは、エレベーターの故障だったそうです。車いすの方やご高齢の方にも、前と同じように安心して楽しんでほしい…。その一心で修理を待ち続け、今年の3月、ようやく運転を再開できることに。スタッフの皆さんの、お客様を想う優しい気持ちが伝わってきて、心が温かくなりました。
「元日」だったことで人的被害はなかった
何よりも心から安堵したのは、人的被害がまったくなかったことです。
地震が起きた1月1日は、美術館の休館日でした。もし開いていたら…と想像すると、胸が詰まります。
「お客様も職員も誰もいなかったこと、それが本当に幸いでした」と話してくださった言葉に、この場所が人の温もりでできていることを改めて感じました。
過去の経験が、未来の宝物を守ったお話
キラキラと輝く繊細なガラスの作品たちは、どうなったのでしょうか。
収蔵庫の作品たちは、地震に備えた棚のおかげで、一つも壊れることなく無事だったそうです。
展示室では、少し欠けてしまったり、展示場所がずれてしまった作品もありました。けれど、その被害を最小限に食い止めてくれたのが「免震台」でした。
平成19年の能登半島沖地震で作品が被害を受けた辛い経験から、東日本大震災を機に免震台の導入を進め、現在では38台を保有されています。今回の地震では、この免震台が大きな効果を発揮し、多くの作品を揺れから守りました。過去の教訓が、大切な宝物をしっかりと守ってくれたのですね。
屋外では残念ながら撤去されてしまった作品もあります。作家さんの想いが詰まった作品だからこそ、修復も簡単ではないのだと伺い、一つひとつの作品への愛情を感じました。
地震発生後、免震台により美術品が守られた様子の写真です。(画像提供:石川県能登島ガラス美術館)
これからも、ずっと安心して楽しんでもらうために
「作品が持つ本来の魅力を、そのまま感じてほしいんです」。
そう語るスタッフの方の言葉通り、作品によっては固定するのが難しいものもあるそうです。
「でも、だからこそ知恵を絞って、できる限りの対策をしたいんです」。そう語るスタッフの方々の真摯な眼差しに、美術館の明るい未来が見えた気がしました。
涙のあとに見つけた、希望の“光”
長いお休みは、悲しいことばかりではありませんでした。
この期間があったからこそ、経年劣化していた部分を丁寧に修繕できたのです。
特に、私がいちばん感動したお話が、展示室3、4にあるプリズムのこと。
地震でずれてしまったプリズムは、東北の業者によって修理されました。そのとき、長年の汚れもすっかり取り払われ…。
「見てください。まるで開館した頃に戻ったみたいに、光がキラキラでしょう?」
嬉しそうにお話しするスタッフさんの笑顔がステキでした。壁に映し出される虹色の光のお写真、スタッフの方にいただきましたよ。
それは、まるで困難を乗り越えた美術館を祝福するような、希望の光なんだなぁと感じました。
幾多の困難を乗り越え、さらに温かい輝きを増した能登島ガラス美術館。
キラキラと輝くガラスたちに会いに、そしてスタッフさんたちの優しい笑顔に癒されに、ぜひ足を運んでみませんか?きっと、心がふんわりと軽くなるような、素敵な時間があなたを待っていますよ。
(写真提供:石川県能登島ガラス美術館)
能登半島を一望できる丘にある美術館
石川県能登島ガラス美術館は、1991年に開館されました。
ヨーロッパのヴェネチアをお手本としてガラス芸術の情報発信をしていく美術館として建設されました。
能登島のとても見晴らしのよい丘の上にあり、七尾湾を一望できる場所に建っています。この美術館の建物は、宇宙基地を思わすようなデザインとなっていてひときは目立ちます。
美術館の建物は、北海道釧路市出身の建築家 毛綱毅曠(もづな きこう)氏によって設計されました。日本建築学会賞など数々の賞を受賞された方です。
建物のコンセプトは、四神相応(古来中国から伝わる風水の一種)をもとに東西南北に四神を象徴する建物を配置したデザインとなっています。(能登島ガラス美術館のパンフレットより一部抜粋。)
まるで宇宙基地のような建物
美術館全体を見渡す場所に立って見ると、宇宙基地を思うわせるような形をしています。正面から見ると3つの建物の様ですが、正面の建物の後ろにも建物があり、複数の建物を廊下でつないぐ構造になっています。
道の駅側から美術館へ行く階段を上ると、このような丸い建物がありまるで宇宙基地のようにみえます。
近くで見ると結構大きいので迫力があります! こちらの建物は別館となっていてイベントやワークショップなどで使用されるそうでう。
美術館の駐車場と建物の間には、シンボルモニュメントがあり、作品名は「蔵」です。「蔵」は、美術館にはお宝でいっぱいという思いが込められた作品です。
このモニュメンは、震災により損傷を受け、修復について検討中だそうです。
ガラス美術館に入ってみましょう!
こちらが正面玄関です。ガラス美術館らしい造りいうのでしょうか、ガラスの窓に囲まれた建物です。どこからでも光が差し込むようになっていて素敵ですね。
正面入り口には、受付があります。
受付横には、コインロッカー4つ、ご自由にお使い頂けるようにとベビーカー1台、車いす1台がありました。
それでは早速、館内に入ってみましょう!重厚な扉から芸術作品を観賞する美術館の趣が感じられます。
展示室は全部で4つ
※館内は撮影禁止となっております。今回に限り取材のため撮影許可をいただいております。
展示室1
扉を開けたすぐは、「展示室1」になります。
長く奥まで続く奥行きのある展示室で、奥へ行くほど少しづつ天井が低くなっています。どこまでも続くような感覚になるので体感しに来て欲しいと思います。真っ白な壁がとても幻想的で作品を際立たせています。
上を見上げると、天井から吊るされた曲線を描く照明は、雲をイメージしているそうです。
壁から天井にかけて丸い窓がついています。その窓の一つ一つのガラスには美術館の建物が描かれています。窓一つ一つご覧いただくとそれぞれ違うものが描かれているので、そちらも見所の一つといえます。
白い廊下
展示室1を見学したら、「白い廊下」を通り展示室2へ行く順路となっています。この「白い廊下」も面白いです。廊下を進んで行くと窓の高さが違っているので、だんだん自分が大きくなった感じがするんですよ。絶対ここに来て体感して欲しいです。
展示室2
展示室2では、企画展や特別展などが開催されます。年に3~4回の展示があります。
展示室2のある建物は3階建てとなっており、1階から3階まで吹き抜けになっていました。
1階の展示室2までは「らせん階段」と「エレベータ」があります。
エレベーターは、ガラス張りになっているので、外からエレベーターの構造を見ることができるのも面白いと思いました。
展示作品とは別に、この部屋の中央にある柱もご覧になってください。少し変わった形をしていて、柱の周りは石川県の工芸品である九谷焼の陶片が埋め込まれています。
2階は多目的ラウンジで、椅子が置いてあるので少し休憩して窓から見える能登島風景を楽しんでいただくこともできます。
この吹き抜けを下から見上げてみると赤い綱状のオブジェが飾られていますので是非ご覧になってくださいね。
このオブジェは、能登の夕日に染まる雲をイメージしているそうです。
ガララスのブリッジ
展示室3、4へ向かうには、ガラスのブリッジを通ります。ガラスのブリッジは、天井も壁もガラスになっています。天井は傾斜になっていて真っすぐ立っていないような感覚でした。来ないとわからない感覚です!(少し年齢の高い人はより感じるかもですよ。)
2階ラウンジ
展示室1を見学し、ガラスのブリッジを通り階段を降りると2階ラウンジがあります。そちらには絶景を眺めることのでき場所がありイスも置いてありますよ。
ラウンジ
2階ラウンジから階段を下りて展示室3、4の手前にもラウンジがあります。ここにとても興味深いものがあるんです。それが、こちらの「液晶ガラスの窓」です。この写真の通り、不透明な白いガラス窓になっています。
窓の前に、「足形」があるので、その上に立つと、白い窓ガラスが透明ガラスに変わって、外の景色が見えるようになりました。面白いですよね。是非、来館されて体験してくださいね。館内は撮影禁止となっていますが、唯一こちらのラウンジでの撮影は大丈夫ですよ。
展示室3、4
ラウンジから左側が展示室3、右側が展示室4です。どちらの部屋へ行くのにも少し階段がありますので足元にお気を付けください。
展示室3、4では、能登島ガラス美術館の所蔵品を展示されています。所蔵品は、イタリアのヴェネチアで制作された現代ガラス、中国清朝のガラス工芸品、国内外で活躍する現代ガラス作家の作品など400点余りがあるそうです。
展示室3、4どちらも対称の部屋になっているので大きさ形は同じです。
展示室3、4の見所の一つが、天井に設置された「プリズム」です。5月から8月の晴れた日に、光が差し込みプリズムを通した光が虹色に輝くそうです。
写真では白い光ですが、虹色になる時に来てみたいものですね。
ガラス美術館の建物自体もアートだと感じました。作品も楽しんでいただけますが、建物も一緒に楽しんでいただけると思います。建物の面白さを子供さんと一緒に味わってみられるも楽しいのではないでしょうか。
トイレ
トイレに入ってみました。洗面台の造りもガラスのようでした。緑とブラウンの色がとても綺麗でした。
展示作品について
石川県能登島ガラス美術館の収蔵品は、中国清朝時代のガラス工芸品やピカソやシャガールなどの20世紀の芸術家たちのデザインにもとづいてヴェネチアで制作されたガラス造形作品などがあります。『能登島美術館パンフレットより一部抜粋』
収蔵品展の他にも、年に数回ガラスに関する作品展を開催されています。毎回どんな作品が楽しめるのかワクワクしますね。
今回訪れた日は、「’21日本のガラス展」を開催していました。
作品展に関しては、美術館のホームページ、Facebook、Instagramなどをご覧になってください。
展望台、日本庭園のあるガラス美術館
作品を見て出口をでたその扉には、案内が書いてありました。
展望台とある方に進んでみると、遠くに海を臨む日本庭園が眼下に広がっていました。
ガラス美術館庭園の展示作品
美術館は小高い丘に建てられていますが、その斜面にはいくつかのガラス作品が展示されています。
上からでも下からでもどんな順番でも周って頂けますのでお散歩しながらご覧になってください。
作品の紹介がのっている「庭園マップ」がありましたので、マップを見ながら作品を紹介したいと思います。
作品名「No.91711」
作品が完成した日が1991年7月11日美術館がオープンした年だよ。
作品名「船おさの集り」
能登島の漁師さんがモデルです。 船の上で話をしているのかしら?
作品名「語らい」
二人が楽しい会話の 輪を広げているみたい。
作品名「海に遊ぶ」
作品の後ろにまわって、ガラスの親子と一緒に能登の海と空を見てみましょ。
作品名「鳥の景」
作品のそばに立って、まるいところに置かれたガラスを見てね。鳥が見る景色のように、ガラスが人の顔や巣の中の卵に見えるかも。すべり台ではないので、上にのると危険です。
作品名 トランスフォーメーション [Transformation1991」
「Transformation-1991」は、作品のまわりをまわりながら、板ガラスの重なりの変化を見よう。冬は雪が庭園一面に降って陽がさした時の作品の影もとってもきれい。
作品名「風」
こちら向きに海を背景にして作品より少しだけ低いところに立って見てみて!
作品名「朱の保存」
つるした唐辛子の形をイメージした作品みたい。 太陽の光で輝く赤色に注目!
作品名「悠久の旅」
太陽の光が作品の中を照らして波形のガラスが白く輝く時が おすすめ。
作品名「STAND ALONE」
つい穴を見るけれど、穴のまわりが作品よ。
作品名「光航」ひかりわたる
光を受けて輝く船の帆をイメージした作品です。
作品名「COSMIC FLY」コズミック フライ
石の柱が宙に浮いているみたい。石の上は、座ると危険です。
こちらの作品は、能登半島地震により被災し無くなりました。
作品名「海へ空へ」
こちらの小道から見てみよう。とんびが海に向かって 飛ぶように見えるかな?
「展望ベランダー」
ここのながめは、最高よ! 能登島に来たら絶対見なきゃ! 雲のない晴れた日には、 右の山の向うに立山連峰が見えるの。
庭園に咲く花は、 5月から7月はタンポポみたいな花 ブタナ、8月はユリが見頃だよ。
ー以上、庭園マップの記述よりー
2025年7月12日より開催 第16回 ’24日本のガラス展
イベントやワークショップ開催
今までに開催されたイベントには、「絵本のじかん」や「おさんぽクイズラリー」などが開催されました。
ガラスの面白さを体験できるワークショップなども開催されています。
ワークショップについては、予約が必要となっていますので美術館までお問い合わせください。
*建物の外観や館内は、細部までこだわった造りで、展示作品、そして美術館から見える風景、見どころ満載の石川県能登島ガラス美術館です。能登島へお越しの際には、是非足を運んでみてください。
この記事を書いた人、のとルネアンバサダー北山里江。
【石川県能登島ガラス美術館 詳細】
住所:石川県七尾市能登島向田町125-10
連絡:TEL0767-84-1175 / FAX0767-84-1129
開館時間:
4月~11月 午前9時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分まで)
12月~ 3月 午前9時00分~午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日:
毎月第3火曜日(祝日の場合は、その翌日)
年末年始12月29日~1月1日
展示替え期間中、館内整備期間中
観覧料:展覧会によって異なります。
※「石川県能登島ガラス美術館」HPより事前印刷にて割引クーポンあり。
駐車場:
美術館入口前 (普通車14台/障害者専用2台)
道の駅のとじま共同駐車場(300台)
※どちらも駐車料金は無料