
「能登で雨の日でも楽しめる観光スポットはないかな?」
「七尾観光の合間に、少し落ち着いた時間を過ごしたい」
そんな方におすすめしたいのが、石川県七尾美術館です。
七尾市にあるこの美術館は、能登地方で唯一の総合美術館。
能登半島地震では施設にも被害が及びましたが、地域の支えと尽力により再開を果たし、現在は再び多くの来館者を迎えています。
七尾が生んだ画聖・長谷川等伯の作品世界をはじめ、建築そのものの魅力、季節ごとに内容が変わる企画展、鑑賞後に立ち寄れるカフェまで、さまざまな楽しみ方が用意されています。
今だからこそ訪れたい、能登の文化と想いが息づく場所。
この記事では、初めて訪れる方にも分かりやすく、石川県七尾美術館の見どころを網羅的にご紹介します。
Contents
現在開催中の展覧会

◆私たち七尾美術館PR隊
会期:2025年12月20日(土)~2026年2月8日(日)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30)
休館日:毎週月曜日(1/12は開館)、1/13
年末年始(12/29~1/3)
観覧料:一般350円(280円)、大学生280円(220円)、高校生以下無料
※( )は20名以上の団体料金
【展示案内】
第1展示室:私たち七尾美術館PR隊
令和6年能登半島地震により1年9カ月にわたって臨時休館を余儀なくされた当館。臨時休館中には文化財レスキューや市内学校への出前講座などを行っていました。
そんな中、臨時休館が続く当館の状況を知った七尾市立小丸山小学校の5年生(当時)が、再開館に向けて自分たちにできることはないかと考え、昨年の総合学習の一環として「震災に負けずに立ち上がろう。七尾美術館PR隊」という活動を行ってくれました。
その活動内で、子どもたちに当館所蔵品の中からお気に入りの作品ベスト3を挙げてもらい、それを元に学芸員が展示品を選抜・展示計画を作成しました。
そして、子どもたちには自分たちなりの視点で作品の見どころを伝える「作品解説」を書いてもらいました。
子どもたちの「作品解説」とあわせてお楽しみください。
子どもたちが選んだお気に入りの所蔵品に、自ら書き上げた瑞々しい「作品解説」を添えて展示がされていました。
専門家とは一味違う、純粋な視点で語られる名品の魅力は必見です。地域の子どもたちの熱意と、復興へ歩み続ける美術館の姿が重なる特別な展示を、ぜひ会場で体感してください。
第2展示室:まなざしの先
「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、私たちの「目」は時に言葉以上に相手に感情を訴えかける力があります。
それは喜びであったり、悲しみであったり、あるいは怒りであったりと様々ですが、相手の顔を見た時に、思いがけない感情に気づき、ドキッとした経験は誰しもあるのではないでしょうか。
本テーマではこの「まなざし」に着目。現代絵画を中心に、写真や工芸などの当館所蔵品のうち、まなざしや視線、あるいは表情が印象的な作品を展示します。
それぞれの作品の「まなざしの先」に何があるのか、皆さまも思いを馳せてみてください。
展示室に入ると、作品の中の「瞳」と目が合い、思わずドキッとさせられます。本展は「まなざし」をテーマに、現代絵画や写真、工芸など多彩な所蔵品を紹介。喜びや悲しみ、言葉にならない感情を湛えた視線の数々に、時間を忘れて見入ってしまいました。描かれた瞳の先に一体何があるのか、作品と対話するようにじっくり鑑賞するのがおすすめです。
七尾が生んだ画聖「長谷川等伯」ゆかりの地
七尾出身の世界的絵師・長谷川等伯
石川県七尾市は、安土桃山時代を代表する絵師、長谷川等伯(はせがわ とうはく)の出身地として知られています。
水墨画の最高傑作のひとつとされる、国宝『松林図屏風』を描いた人物として、その名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
石川県七尾美術館では、等伯の生涯や芸術の歩みを、地元ならではの視点で紹介しています。
継続的に開催されてきた「長谷川等伯展」シリーズ
七尾美術館では、長年にわたり長谷川等伯をテーマにした展覧会シリーズが開催されてきました。
原作品の展示が難しい場合でも、関連資料や解説を通して、等伯の世界観を深く知ることができる内容になっています。
「地元・七尾だからこそ伝えられる等伯像」を大切にしている点も、この美術館ならではの魅力です。

いつでも触れられる、高精細映像による作品紹介
国宝作品は常時展示されるものではありませんが、七尾美術館では、高精細映像を用いた展示によって、等伯作品の魅力を伝えています。
実物が見られない時期でも、
「せっかく来たのに何も見られなかった…」
とがっかりすることはありません。
映像ならではの細部表現を通して、筆遣いや構図の奥深さをじっくり味わえるのも、現代的な展示の楽しみ方です。
石川県七尾美術館で長谷川等伯の世界に触れることは、単なる美術鑑賞にとどまりません。
七尾という土地が育んだ文化や歴史を知り、今も受け継がれている価値に目を向ける時間でもあります。
震災を経てなお、こうした文化を大切に守り、発信し続けていること自体が、能登の力強さの表れと言えるでしょう。
◆これまでの長谷川等伯展
『長谷川等伯展』 〜帰ってきた国宝・松林図屏風〜
会期:2025年9月20日~10月16日
開館30周年と震災復興を祈念して開催された、胸が熱くなる特別展でした。目玉は、20年ぶりに待望の里帰りとなった国宝『松林図屏風」。霧の中に浮かぶ松林を目の前にすると、その圧倒的な静寂に引き込まれ、震災を乗り越えた勇気をもらえるようでした。地元が生んだ巨匠・等伯の魂が、能登の地に再び希望の光を灯してくれた、忘れられない展示となりました。


季節ごとに楽しめる企画展(ボローニャ展など)
親子連れにも人気の「ボローニャ国際絵本原画展」
石川県七尾美術館では、年間を通じてさまざまな企画展が開催されています。
なかでも広く知られているのが、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展です。
この展覧会は、毎年秋ごろに開催されることが多く、国内外の絵本原画を一度に楽しめる貴重な機会として親しまれています。


絵本という親しみやすいテーマのため、
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小さなお子さん連れ
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アート初心者の方
-
雨の日の観光先を探している方
にもおすすめです。
企画展の内容は年ごとに変わるため、訪れるたびに新しい発見があります。
◆過去の展示期間中のグッズ販売をご紹介
受付とグッズの販売。グッズは絵本ファン必見の貴重なものが数々あり、中でも原画展作品のポストカードは種類豊富で毎年買い込んでしまいます。


◆過去のイタリア・ボローニャ国際絵本原画展の様子
館内ガイド:初めてでも安心!快適に楽しむためのポイント
石川県七尾美術館は、丘の地形を活かした2階建ての構造になっています。
展示室の構成(2階からスタート)
入り口と受付は2階にあります。
第1展示室は2階に、第2展示室と第3展示室は1階にあり合計3つの展示室があります。階段のほかエレベーターも完備されているので、車椅子やベビーカーでも安心です。
雨の日や子連れに嬉しい設備
コインロッカー:荷物を預けて身軽に鑑賞できます。
バリアフリー:誰でも使えるトイレやエレベーターが整備されており、3世代での観光にも最適。
アートホール:240席ある円形ホールです。講演会や映画会などイベントで使用されます。
また、発表会でも利用できます。
エントランスホール:受付・ショップ ・観覧券 販売 ・公式図録・グッズ販売
ハイビジョンコーナー:七尾市出身の絵師・長谷川等伯(信春)の作品を年代ごとにまとめた映像番組が繰り返し
上映されており、展示期間外でも等伯の世界に触れることができます。


写真撮影について
展示作品は原則撮影禁止ですが、ロビーや外観は撮影可能です。
中にはこんなマークが付けられている、撮影OKの作品もあります。

鑑賞後の休憩に。カフェ・ランチ・お土産情報
館内カフェ「ティールーム」
展示を楽しんだあとは、館内にあるティールームでひと休みするのもおすすめです。
入り口は2カ所あります。正面玄関からすぐお入りいただけるほか、展示の観覧ルートの終点にあり、そのままスムーズにお立ち寄りいただけます。


大きな窓からは庭園を望むことができ、静かな時間が流れます。


展覧会と連動した期間限定メニューが提供されることもありますが、通常時でもスイーツやドリンクなど、気軽に利用できるメニューが用意されています。(メニューは、2025年12月取材時の物です。参考までにご覧ください。)


◆過去の『ボローニャ国際絵本原画展限定!選べるコースター付き特別メニュー』のご紹介
お食事メニューを注文すると、特典として『ボローニャ国際絵本原画展』限定コースター(全5種)が1枚プレゼントされました。



ミュージアムショップでオリジナルグッズを
館内のミュージアムショップでは、
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長谷川等伯関連グッズ
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絵本原画展にちなんだ商品
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図録や文房具
などを購入することができます。
旅の記念やお土産選びにもぴったりです。



あわせて行きたい!周辺のおすすめランチ
石川県七尾美術館には本格的なレストランはありませんが、周辺には魅力的な飲食店が点在しています。
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七尾湾の海の幸が楽しめる能登食祭市場
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レトロな雰囲気が残る一本杉通り商店街
など、美術館鑑賞とあわせて立ち寄れるスポットが豊富です。
七尾美術館の美しい庭園は写真映えスポット
駐車場からのアクセス(徒歩約2分)
駐車場から道路を渡り、シンボルである丸いゲートをくぐってください。案内板に沿って、小高い丘のまわりを散策気分で進むと、すぐに七尾美術館が見えてきます。






庭園:海も見える!七尾を一望することのできる丘を散歩。
※2025年12月現在庭園は復旧工事中のため立入禁止となっています。
七尾美術館を囲む庭園は、アートと自然が溶け合う、癒やしの散策ルートです。
緩やかな丘に沿った遊歩道を歩けば、四季折々の花々や美しい緑を楽しむことができます。
天気の良い日には、美術館のモダンな建築と自然が織りなすコントラストを背景に、
旅の思い出の一枚を撮影してみてはいかがでしょうか。
あそこに向かえば何かが見える・・・という雰囲気をもっている丘。ここにもアート作品が。

少し目を向ければ、すぐそこに美しい七尾湾が。
海の向こうにどっしりと構える島は能登島です。

つい駆け下りていきたくなるほどの開放感!
見た目よりも急な坂道になっていますので、お子様と一緒に駆け上がったり散策したりする際は、
足元に気をつけて存分にお楽しみください。

アクセス・駐車場と所要時間
車・バスでの行き方(まりん号が便利)
石川県七尾美術館へは、車・公共交通機関どちらでもアクセス可能です。
七尾駅から、車で約5分、徒歩で約20分です。
観光で訪れる方には、七尾市内を巡回する観光バスまりん号の利用が便利。
主要観光地を結んでいるため、初めての七尾観光でも移動しやすいのが魅力です。
※ 運行ルート・時間などは七尾市役所のHPでご確認ください。
一般駐車場の他、七尾美術館すぐ横には優先者専用駐車場も設けられていますので、身体が不自由な方がいる場合でも、すぐに美術館に入ることができます。
所要時間の目安
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さくっと鑑賞派: 約30〜40分
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じっくり鑑賞派: 約1時間半〜
企画展の内容やカフェ利用を含めるかどうかで、滞在時間は調整できます。
まとめ
石川県七尾美術館は、
アートファンはもちろん、雨の日の観光先を探している方や、家族連れ・カップルにもおすすめできる、七尾観光の定番スポットです。
長谷川等伯という偉大な画家の足跡に触れ、建築の美しさを味わい、静かな時間を過ごす・・・
そのひとつひとつの体験が、能登の文化や歴史に目を向けるきっかけになります。
能登半島地震によって大きな影響を受けたこの地域にとって、美術館の再開は「日常と文化を取り戻す象徴でもあります。
石川県七尾美術館を訪れ、作品を鑑賞することは、特別な支援を意識しなくても、能登の今を応援する行動のひとつにつながります。
七尾を訪れた際は、ぜひ旅の途中に立ち寄り、
アートを通して能登に寄り添う時間を過ごしてみてください。
【石川県七尾美術館 詳細】
住所:石川県七尾市小丸山台1-1
TEL.:0767-53-1500
FAX: 0767-53-6262
駐車場(無料):普通車62台+バス4台、優先駐車場2台(楽屋横)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
※Wi-Fiは、エントランスホールとティールームでご利用できます。
令和6年能登半島地震から再開への復興物語
令和6年能登半島地震で大きな被害を受けながらも、懸命な復旧作業を経ていよいよ再開される七尾美術館を訪ね、学芸員の北原さんにお話を伺いました。そこには、困難を乗り越えた人々の熱い情熱と、地域との心温まる絆の物語がありました。
甚大な被害、そして再開への長い道のり
2024年1月1日、能登半島を襲った地震。七尾美術館もまた、深刻な被害を受けました。
「地震当日の夕方、心配で駆けつけると、館内には非常ベルが鳴り響いていました」と北原学芸員は当時を振り返ります。建物の被害は甚大で、展示室やエントランスでは壁が剥落し、屋外では浄化槽が隆起していました。特にエントランスは、吊り天井が激しい揺れで壁に衝突したために損傷が大きく、壁の大理石も剥がれ落ちてしまいました。
展示室では、彫刻作品が倒れて破損し、一部の焼き物にも被害がでました。幸いにも、免震台に設置されていた作品や、転倒防止ベルトで固定されていた収蔵庫の美術品は難を逃れました。
地震後、職員の方々が真っ先に行ったのは、作品の作者や所有者、関係者への状況報告でした。そして、続く3ヶ月間は、膨大な数の収蔵品を一つひとつ箱から出し、被害の有無を点検するという、気の遠くなるような作業に費やされたといいます。その途方もない作業と、美術品への深い愛情には、ただただ頭が下がる思いでした。
破損した作品については、作者やご家族と修復方法を丁寧に協議し、一点一点、修復の依頼を進めていったそうです。
【写真提供:七尾美術館】


地域の支えが光となった
建物の本格的な修復工事が始まるまでの間、職員の方々は出張出前講座や文化財レスキューといった活動を再開。そんな中、忘れられない出来事がありました。地元の小丸山小学校の児童と先生から、「何かお手伝いできることはありませんか」と心温まる連絡が届いたのです。
「地震後の作業で疲弊していた私たちにとって、この申し出は本当に大きな勇気になりました。」と北原さんは語ります。
出前講座は、実際に被災した作品を学校へ運び、子どもたちに美術品と災害について考えてもらう内容で行いました。
疲弊しきった中で差し伸べられた子どもたちの純粋な気持ちが、どれほど大きな光となったことでしょう。お話を伺いながら、人と人との温かいつながりこそが、復興の大きな力になるのだと胸が熱くなりました。
国宝を守るための見えない努力
建物の修復には、多くの困難が伴いました。特に、長谷川等伯の国宝「松林図屏風」をはじめとする貴重な文化財を展示する施設ならではの厳しい基準があります。工事前には、工事内容の詳細な説明が要求され、工事完了後も、接着剤などから発生する化学物質が完全に揮発し、作品にとって安全な環境だと証明されるまでの「枯らし期間」と呼ばれる時間が必要でした。文化庁の許可を得るためには、この基準値をクリアしなければなりません。
「これらの複雑な手続きと修復作業を乗り越え、無事に『長谷川等伯展』の開催にこぎつけられたのは、スタッフ一人ひとりの大変な熱量があったからこそです」と北原さんは言葉に力を込めます。建物をただ元に戻すだけでなく、美術品にとって最高の環境を取り戻すための専門性とひたむきな情熱が、今回の再開館を実現させたのだと強く感じました。
休館中の活動
石川県立歴史博物館(歴博)のご協力を得て、昨年の10月19日から11月17日まで、石川県立歴史博物館で出張展「七尾美術館inれきはく」を共同開催されました。七尾美術館の所蔵品と寄託品の展示が行われました。
また、11月6日から11月17日まで、石川県立図書館で「おかわりボローニャ~絵本とイラスト展~」を開催されました。毎年、七尾美術館で開催している「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」が地震の影響で開催できなかったことで、関係者の協力を得て実現したそうです。七尾美術館として、これまでのボローニャ展の歩みを紹介するパネルや過去のポスターなども展示されたそうです。
七尾美術館の学芸員の方々は、県や国が主導となる文化財レスキューにも参加されたそうです。
お話を伺う中で、こうした活動を通して多くの方々に支えられていることへの深い感謝の気持ちが伝わってきました。
最後に北原さんは、「美術館前の庭も大きな被害を受けました。庭の復旧は、残念ながら今回の再開には間に合いませんでした。展覧会をご覧いただいた後、美しい庭も楽しんでいただくのが本来の姿。一日も早く元の姿に戻したいです。」と、未来への思いを語ってくださいました。
多くの人々の尽力と支えによって、再び扉が開かれる七尾美術館。復興のシンボルとして新たな一歩を踏み出すこの場所へ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。























