
「もう一度、この能登で笑いたい」— 廃業の淵から立ち上がった老舗和菓子店の情熱。創業100年へ、未来へつなぐ希望の味。
2024年1月1日、穏やかな元日の午後を揺るがした能登半島地震。多くのものが失われ、当たり前の日常が奪われました。石川県七尾市田鶴浜町で暖簾を掲げる「能登情熱和菓子 杉森菓子舗」の三代目、杉森修平さんを訪ねました。
「僕、楽観的なんですよ」
取材が始まるとすぐ、杉森さんは太陽のような笑顔でそうおっしゃいました。その明るさの裏には、想像を絶する苦悩と、それを乗り越えた強い想いが隠されていました。これは、被災という大きな困難に立ち向かいながらも、大好きな和菓子で能登を元気にしたいと奮闘する、杉森さんのお話を伺いました。
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来年で創業100年。地域に愛される杉森菓子舗の宝物

杉森菓子舗は、2026年に創業100年を迎える老舗の和菓子屋さん。地元の人々のお祝い事や、ほっと一息つきたい日常に、いつも優しく寄り添ってきました。
お店に並ぶお菓子は、どれも杉森さんの情熱と愛情がたっぷり。
一番のおすすめは、ふわふわのお餅の中に、なめらかなクリームと上品な栗の風味が広がる「のと情熱大福モンブラン」。甘酸っぱい「のと情熱大福いちご」、頬張れば誰もが笑顔になる、まさに「ご褒美スイーツ」です。
夏のお菓子におすすめするのが、2022年度おもてなしセレクションを受賞した「NOTO水ようかん」。こちらは、つるんとした喉ごしが夏の暑さを忘れさせてくれる逸品。さらに、「あいどら」、このどら焼きには、『がんばろう能登』の文字が刻まれ能登の復興を力強く応援しています。


詳しいお店の紹介記事はこちらをご覧ください。
すべてが変わった、あの日。

地震が起きた元日の午後2時。杉森さんは、翌日からの営業に備え、ご家族と工場でお菓子作りの準備をしていました。突然の激しい揺れ。幸いにも従業員さんはお休みでした。
しかし、近くに住むご両親を心配して駆けつけたところ、実家とお菓子用の資材倉庫は、全壊していました。
「言葉も出ませんでしたね…」
実家のご両親は、初詣先の気多大社からの帰り道、自動車の中で地震に遭いました。何とか無事に自宅近くの駐車場まで帰り付き、ご家族みなさんが合流できました。しかし、向かった先の避難所は人で溢れかえり、ご自身の車とご両親の車、2台で不安な夜を明かしたそうです。その時、七尾市に帰省する途中だった息子さんからの電話が。
「新幹線が地震で止まったって。だから、『もう、そのまま東京に引き返しなさい』って伝えました」
その一言に、どれほどの想いが込められていたことでしょう。
お店に戻ると、店内は変わり果てた姿に。ショーケースはずれて動き、壁には痛々しい亀裂が。棚から落ちた商品やお皿は、粉々に割れて散乱していました。「資材を置いていた倉庫は全壊、工場の機械もずれて壊れてしまいました。」
「廃業しようか…」絶望の淵から見えた一筋の光
あまりの光景に、「一番最初に考えたことは、廃業しようかということでした。再開しても、お客さんが来てくれるだろうか…」。希望の光が見えない中、追い打ちをかけたのが「断水」でした。
「水が出ないことには、お菓子は作れない。3月まで水は出ないかもしれないと聞き、本当にどうすればいいのかと…」
しかし、杉森さんのお店がある田鶴浜地区は自己水だったため、1月31日に水が通ることに。そして2月1日、杉森菓子舗は営業を再開することができたのです。
その間、杉森さんはじっとしていたわけではありませんでした。冷蔵庫の中に奇跡的に残っていた、お正月に販売する予定だったお菓子。それを手に、1月4日、田鶴浜地区3ヶ所の避難所を回りました。
「災害用の食事はあるけれど、甘いものなんてない時でしょう。『こんな時に、お菓子が食べられるなんて』って、本当に喜んでもらえたんです」。
その時の「ありがとう」という言葉は、今も杉森さんの心を温め、支え続けています。
人の温もりが、一番の力に
営業再開に向けて歩み出す中、杉森さんを支えたのは、全国から寄せられた温かい支援でした。
断水中の間は、「水はね、親戚や友人が次々と持ってきてくれて。ほとんど自分で汲みに行くことはなかったんです。本当にありがたかった」
そして、何よりも力になったのが、全国の皆様からの「お見舞金」だったと言います。東京の知人、お菓子の組合、商工会、そしてたくさんの友人たち。お店のホームページに設けた支援金の窓口にも、全国から温かい気持ちが届きました。オンラインショップでの商品の購入も、大きな励みになりました。
一つ一つの支援が、一つ一つの「美味しい」の声が、「もう一度頑張ろう」という情熱の炎を、さらに大きく燃え上がらせてくれたのです。
「能登を忘れないで」—未来へつなぐ、杉森さんの挑戦
復興は少しずつ進んでいます。しかし、地震の影響で人口は減り、観光客の姿もまばらなのが七尾市の現実です。「経営は厳しいですよ」と杉森さんは正直に話してくれました。
それでも、杉森さんの目は未来を見ています。
「僕の今の目標は、『能登を忘れないで』って伝え続けることなんです」
どこからでも声がかかれば、能登のPRのために駆けつけます。それが、お店のためだけでなく、能登全体の未来に繋がると信じているからです。
「キッチンカーみたいなものやキャラバン隊を作って、能登の産品を全国に売りに行くチームができたら面白いですよね。それが商売として成り立てば、継続的な支援になる」
そんな杉森さん、実は商品開発のターゲットは「自分自身」なのだとか。
「僕、食べることが大好きなんです。だから、美味しいと思ったものをインプットして、頭の中で『これとこれを組み合わせたら、もっと美味しいものができるな』って考えるのが、楽しくて仕方ないんです」
その柔軟な発想は、お店の未来だけでなく、地域の未来にも向けられています。
「能登町に『イカキング』があるでしょう。七尾にも特産品を活かした『牡蠣クイーン』みたいなモニュメントがあったら面白いと思うんですよ!『牡蠣クイーン』が季節ごとに姿を変える様子なんかをSNSで発信したら面白いと思うんですよ。この二つのモニュメントを巡るフォトスポットができたら、能登に何度も足を運ぶきっかけになるじゃないですか」
そう語る杉森さんの目は、まるで少年のようにキラキラと輝いていました。
最後に、全国の皆様へ
インタビューの最後に、杉森さんから全国の皆様へのメッセージをいただきました。
「皆さん、能登を忘れないでください!そして、一回能登に来てみてください!」
その言葉には、能登の美しい自然、美味しい食べ物、そして何より、温かい人々の心に触れてほしいという、切なる願いが込められています。
この記事を読んで、杉森菓子舗の和菓子を食べてみたい、能登を応援したいと思ってくださったなら、ぜひオンラインショップを覗いてみてください。そしていつか、この美しい能登の地で、杉森さんの情熱がこもった美味しい和菓子を味わってみませんか。
あなたの「美味しい」の一言が、能登の未来を照らす、大きな希望の光になります。
企業詳細
店名 能登情熱和菓子 杉森菓子舗
代表 三代目 杉森 修平
住所 石川県七尾市田鶴浜町リ部45
営業時間 9:00~16:00
定休日 火曜日、元日
電話 0767-68-2016
駐車場 あり
ホームページ https://s-kashi.com/



















