
震災後、七尾で一番早く寿司店を再開した千代ずしさんへ伺ってきました。心に響くエピソード、被災直後の混乱、炊き出しでの絆、そして寿司を通じて地域と人々に笑顔を届ける姿…すべてに温もりが詰まったお話をお聞きしました。
地震当日のこと

2024年1月1日。能登半島を襲った大地震。
七尾市にある千代ずしさんはお正月三が日はお休みだったため、店主の村田成司さんは、中能登町の実家の寿司店を手伝っていました。その後、羽咋市の気多大社へ参拝に行かれていた時に地震にあわれました。津波警報を受けて1時間ほど境内にとどまり、日も暮れ始めたこともあり自主的に帰宅をすることにしました。村田さんは、テレビの報道で七尾の被害の大きさを知り、お店のことが気になりましたが、暗い中状況がわからないまま七尾市へ帰ることは危険と考え、とりあえず実家へ戻られたそうです。
翌日、ご夫婦で七尾の店舗へ。寸断された道を、ふだんなら30分のところを1時間かけて七尾のお店に到着されました。一番心配したのはお店の建物が建っているかでした。「建物が残っていてよかった」と、まずは安堵の気持ちがこみ上げたといいます。しかし、店内に入ると目にしたのは崩れた棚、散らばる食器。
お店再開のこと
地震発災当初は水も出ず、不安がつのる毎日。それでも飲食業の仲間と炊き出しをはじめ、七尾市駅前の商業施設パトリア内にある里山里海キッチンで2週間、避難所へ料理を届け続けました。
七尾市の水道復旧は4月頃までかかるだろうという情報があり、それまで「店を閉めたままではいけない」と立ち上がった村田さんは、水を実家から運び、米や魚の確保を工夫しながらテイクアウト営業を開始。そして2024年1月23日、生ものを扱うお店として七尾でいち早く営業再開されました。
SNSでの発信もあり、お店にお客様が訪れてくださいました。「今年初めて生のお寿司を食べた」と喜ばれたそうです。七尾市は、新鮮な魚が豊富に獲れるところ。村田さんは、昔から食べなれたものが食べられることで「日常が戻った」と感じることができる糧になったのではないかと話されます。1つ良かったことは、早い再開のおかげで、テレビや新聞の取材が相次いだことです。それが村田さんの安否を知らせることとなり、全国の知人からも連絡があったことが凄く嬉しかったそうです。
2月上旬に水道が復旧し、下旬に店内飲食も再開。2月の再開でしたので、多くのボランティアや支援者の方々が足を運び、七尾の味を堪能してくれたそうです。支援にきている名古屋市の職員が「地元でお金を使うのも支援」だと言って上司が餞別をくれたのでと千代ずしに訪れて食事をしてくれたそうです。その職員の方が、最近プライベートで七尾市を訪れ、「町の復興の様子も見たくて、また千代ずしさんのお寿司が食べたくて」と立ち寄ってくださったことがとても嬉しかったそうです。思わず心が温まるエピソードです。

未来の目を向けて考えること
最近では観光客も徐々に戻りつつあり、千代ずしはいつもの笑顔を取り戻しています。七尾は「寿司王国」とも呼ばれるほど寿司文化が根付いた土地。豊かな食材と高い技術力が揃う場所。お寿司屋さんも多い。しかし、今後、お寿司の高い技術を伝承していく後継者が必要なのではないだろうかと思うと村田さんは言います。そんな想いから、村田さんは「七尾すしアカデミー」の構想も語ってくれました。寿司の魅力を次世代へ、そして世界へと継承したいという夢は、きっと多くの人を惹きつけることでしょう。
七尾のブランドイメージを高めたい。七尾をお寿司の聖地にしたい。この場所を、全国に、世界に届けたい。
お店のカウンターには、地震後にお客様が手づくりした日本地図が飾られています。来客された方がご自分の県にシールを貼るその地図は、やがて全国制覇へと到達。現在飾られている日本地図は2枚目になり地震後1年ほどで到達。
今では海外からの訪問客も増えました。外国のお客様にはカウンターに座っていただき、村田さん自ら英単語やスマホを使って笑顔のコミュニケーションを図っているそうです。カウンターに座って、寿司を握る姿を見ながら食べて楽しむのが寿司の醍醐味だそうです。

防災についてお聞きしたこと
「大切な食器を守る対策が必要です」この言葉には、大事にしていた高級な食器がたくさん割れてしまい、二度と取り戻せないという残念な想いが込められています。また、何かと必要な水のストックはとても大切です。
また、地震への備えとして、備蓄も大切ですが、それ以上に重要なのが避難経路の確保です。
私の妻は、地震が発生した際には必ず玄関の扉を開けるようにしています。これは、建物の歪みなどで扉が開かなくなることを防ぎ、すぐに外へ避難できるようにするためです。
今回の地震では、たまたま店がお休みだったため、お客様はおらず、大きな混乱もありませんでした。結果として、無事にケガもなく過ごすことができました。
やはり、日頃から避難を意識した行動をとることが、何よりも命を守るために必要だと感じています。
最後に、村田さんからのメッセージ
「報道が減っても、元に戻ったわけではありません。どうか能登のことを忘れないでください。どんなかたちでも、皆さんが能登の情報を広めてくだされば、それが何よりの支援になります」
震災を乗り越え、寿司を通して人々の心に寄り添う千代ずし。その握る一貫一貫が、希望の味となって七尾の未来を彩っています。

お店の詳しい情報は、のとルネホームページ記事をご覧ください。
企業詳細
店名:能登前寿司 千代ずし
代表:村田 成司
住所:石川県七尾市松本町ニ25-1
営業時間:11:30~14:00、17:00~21:30(L.O.21:00)
定休日:水曜日
電話:0767-57-5316
駐車場:あり
ホームページ https://www.chiyozushi.com/shop



















