長谷川等伯展《水墨・濃淡の妙》VS《着色・彩りの美》皆がわかる鑑賞の楽しみ方【石川県七尾美術館】

のとルネアンバサダー、イベント担当るっちです。

今年もやってまいりました、石川県七尾美術館においての長谷川等伯展。

今年で27回目となります。

長谷川等伯展が毎年行われているのは七尾美術館だけ

なんと、七尾美術館が開館の翌年から、一度も欠かすことなく、毎年開催されています。

日本を代表する絵師と言っても過言ではない長谷川等伯。その展覧会を毎年行うことができるのは全国でも七尾美術館しかありません。

それは、長谷川等伯の生誕の地がここ七尾である縁です。

能登自慢の、財産であると思います。

展示室と展示室の間の通路には、現在までの27回の長谷川等伯展のポスターが並びます。

毎回趣向をこらしたテーマで、飽きさせる事なく長谷川等伯の作品を毎年楽しませてくれた七尾美術館。

平成17年には国宝中の国宝、長谷川等伯の代表作・松林図屏風の展示がありました。

全国から観客が押し寄せ、大変な人で、観覧時間の延長もされたとのことです。

そのように、いつまでも人を惹きつけて止まない長谷川等伯展。

今年はどのような作品が並ぶのでしょうか・

長谷川等伯展今回はテーマ別の展示

毎年テーマを変えて行われている長谷川等伯展。

2022年は、《水墨・濃淡の妙》と、《着色・彩りの美》が、メインテーマとなっています。

テーマ1《水墨・濃淡の妙》では、等伯の水墨画の濃淡や山水画の幽玄さなどを感じ取ることができます。

テーマ2《着色・彩りの美》では、水墨画の幽玄さとは対照的に、色の華麗な作品を見ることができます。

さらに《長谷川派の着色・金碧画》というテーマで、等伯の息子や弟子たちによる作品が展示されています。等伯から受け継いだ感性がどのようにあらわされているかを楽しむことができます。

今回は国指定重要文化財が3作品あります!

石川県指定有形文化財は5作品あります。

そして、北陸初公開作品もありますよ。

長谷川等伯を知らなくても楽しめる鑑賞の仕方

長谷川等伯のファンの方は、作品の楽しみ方をとくとわかっていらっしゃると思います。

しかし、長谷川等伯を知らなくても、美術のことがわからなくても、

長谷川等伯展って面白い!

と思える楽しみ方を、七尾美術館学芸員・北原洋子さんから教えていただきました。

北原さんは等伯の作品を本当に愛しており、それが伝わってくる解説で、

すべての作品の解説が終わるころには私もすっかり等伯のファンになりました。

目録に沿って、作品名と楽しむポイントをお伝えしていきますね。

テーマ1《水墨・濃淡の妙》

受付をとおり、第一展示室へ。

まずは、テーマ1《水墨・濃淡の妙》です。

●達磨図(石川県指定有形文化財) 長谷川信春(等伯) 室町~桃山時代(16世紀) 所蔵:七尾市 龍門寺

七尾市にあります、有名な絵です。等伯が信春と名乗っていた若い頃の作品で、どっしりと構える達磨像です。

● 陳希夷睡図(石川県指定有形文化財) 長谷川信春(等伯) 桃山時代(16世紀) 所蔵:石川県七尾美術館

等伯は、若い頃の作品として仏画を多く残していますが、人物画もしっかり残されています。

●寒江渡舟図 長谷川信春(等伯) 室町~桃山時代(16世紀) 所蔵:個人

こちらは等伯30歳代の頃の作品です。この作品の隅に、人物が描かれています。この人物は後の作品にも描かれているんですよ。こちらの人物をよく見て次の作品へお進みくださいね。

山水図襖(国指定重要文化財) 長谷川等伯 天正17年(1589) 所蔵:京都市 圓徳院

こちらは等伯51歳の頃の作品です。この山水図は襖に描かれています。次に展示されている松林架橋図襖と同じ場所に納められた襖だったそうです。明治時代にそれぞれ別々の場所に所蔵されたそうです。山水図襖は割と保存状態がよく、等伯の筆跡も墨の濃淡もわかりやすく見えます。

そして、襖紙の桐の文様がはっきりと見えます。この桐の文様がまるでぼたん雪に見えませんか?等伯は桐の文様を雪に見立てて描いたのでしょうか。

この山水図の右下に、人物が描かれています。先の寒江渡舟図に描かれていた人物と見比べてみて下さいね。10年以上経ってからも描かれているんです。

こちらは母と子の姿で、前にお父さんらしき人も見えます。親子かな?家族を描いているのかな?と想像力をかきたてられる作品です。

●松林架橋図襖 長谷川等伯 天正17年(1589) 所蔵:京都市 樂美術館 

北陸初公開作品です。

元々は山水図襖と同じお寺にありましたが、こちらは襖紙の桐の文様はやや見えにくくなっています。そして等伯の筆跡もやや薄くなっているようです。

しかし、こちらの襖に描かれている左の松林の図にご注目下さい。

長谷川等伯の代表作・松林図屏風の松林にそっくりです!こちらは松林図屏風より前の作品ですので、

この松林図が、後の松林図屏風に繋がる作品だったのではないかと研究者の間では注目をあびているそうですよ。

●松竹図屏風(石川県指定有形文化財) 長谷川等伯 桃山時代(16世紀) 所蔵:石川県七尾美術館

墨の美しさ、濃淡の絶妙さを見ることができます。竹を一気に描き上げている筆使い、風に流れる竹の葉のはかなさ。木肌の性質を墨の濃淡だけで表現している等伯の技量には目をみはるものがあります。

● 複製松林図屏風(原本:国宝)平成22年(2010) 所蔵:石川県七尾美術館

原本:長谷川等伯 桃山時代(16世紀) 所蔵:東京国立博物館

言わずと知れた国宝の複製です。海外でも評価が高いこの作品。長谷川等伯は日本のレオナルド・ダ・ヴィンチと呼ばれ、作品モナ・リザと比較されることが多いそうですよ。

松林図屏風に描かれているのは晩秋の景色と言われています。しかし一方で紙継ぎの位置のズレやハンコが後から捺されているなど、後年に謎を残しています。それが松林図屏風の魅力の一つなのかもしれません。

こちらの作品の楽しみ方で是非試していただきたいのが、遠近で見ることです。

まずは近くで見て、筆の勢いや等伯の激しい気迫を感じて下さい。力強い松林が見えると思います。

そして、そのまま後ろに下がって(設置のベンチにはご注意くださいね)、うって変わった静寂な雰囲気を感じてみて下さい。

同じ絵からふたつの感情を味わえます。

列仙図屏風(国指定重要文化財) 長谷川等伯 桃山時代(16世紀) 所蔵:京都市 壬生寺

等伯50歳代の頃の代表作です。仙人たちの修行の険しさを険しい木々たトゲトゲした枝などから表現し、描き上げています。

テーマ2《着色・彩りの美》

展示室はかわり、次のテーマは豪華で華麗な作品を楽しむことができます。

等伯は松林図屏風が大変有名で、水墨画だけなのかと思っている方もいらっしゃるようですが、実は等伯は若い頃は着色豊かな仏画を、晩年は華麗な作品を残しています。

共通の植物のモチーフをお楽しみください、と解説にありました。

何の植物が共通しているか、おわかりになるでしょうか?

●善女龍王図(石川県指定有形文化) 長谷川信春(等伯) 室町時代(16世紀) 所蔵:石川県七尾美術館
●愛宕権現図(石川県指定有形文化) 長谷川信春(等伯) 室町~桃山時代(16世紀) 所蔵:石川県七尾美術館
●海棠に雀図 長谷川信春(等伯) 室町時代(16世紀) 所蔵:個人

こちらの作品に描かれているスズメはまるで本物のよう!羽の模様、親子のスズメの仕草などが生き生きと描かれています。

子スズメは4羽描かれています。さぁ、見つけることができますか?

●四季花鳥図屏風 長谷川等伯 桃山時代(16世紀) 所蔵:個人

今回の長谷川等伯展のポスターになっている作品です。

一つ一つの花、木や草がとても丁寧に描かれています。葉の裏表、花びら一枚、自然を見事に表現しています。

桜、菊などは胡粉(ごふん)が盛られています。胡粉とは、牡蠣の殻からつくられた粉です。

胡粉が盛られている花の絵は立体的に見え、豪華さを醸し出しています。

昔はろうそくの灯りを使用していたので、さらに立体的に見えたことと思います。

この作品の右端に、可愛らしいスミレとタンポポがひっそりと描かれていますよ。是非見つけてみて下さいね。

松・桜図襖(国指定重要文化財) 長谷川派 桃山時代(16~17世紀) 所蔵:京都市 妙蓮寺

この豪華さは、桃山時代を象徴するような障壁画です。

作者が長谷川派、となっているのは、不確かではあるが長谷川等伯を始祖とする画派であることには間違いのない作です。

この立派な筆使いはもしかしたら等伯が筆をいれているかもしれないし、等伯指導の元で弟子が描いたのかもしれません。

●四季柳図屏風 長谷川等伯 桃山時代(16世紀) 所蔵:個人

北陸初公開作品です。

こちらの柳の図は、とにかく大胆!勢い、風を感じるかのような若い柳の姿から、季節を移ろい落ち着いた柳となり、次第に枯れて雪を被った柳の枝が描かれています。

柳だけで季節を表現しています。侘び・寂びも感じる作品です。

とっても抒情的で、ここまで自然を表現できるのは後にも先にも長谷川等伯だけではないでしょうか、と思うくらいの圧倒的存在感があります。

テーマ3《長谷川派の着色・金碧図》

次の展示室は、長谷川派、等伯の息子たちによる作品です。

●秋草図屏風 長谷川宗宅(等後) 桃山時代(16~17世紀) 所蔵:京都市 南禅寺

宗宅(等後)は、等伯の次男です。等伯の繊細な感性を受け継いだと思わせる作風を残しています。

放射状に広がる萩とススキを描いた作品は、風になびく自然を描いた等伯とは明らかに違いますね。宗宅ならではの作風と言えるでしょう。

●柳橋水車図屏風 長谷川派 桃山時代(16世紀) 所蔵:金沢市 大乗寺

宇治川と橋、四季の柳や水車が描かれています。

荘厳、豪華な図です。この図は桃山時代という豪華絢爛な時代に流行し、当時の大名に好まれた図だったそうです。

長谷川派だけがこの図柄を描いています。その大きさ、豪華さは見る人を感動させますよ。

●李白・陶淵明図屏風 長谷川宗宅(等後) 桃山時代(16~17世紀) 所蔵:京都市 北野天満宮

こちらも等伯の次男・長谷川宗宅(等後)の作品です。七尾初公開となります。

描かれている童子の姿は、長谷川派独特の顔です。オノで割ったような岩や柳と柴垣も長谷川派っぽいですね。

●松・杉・槇図屏風 長谷川等誉 桃山時代(16~17世紀) 所蔵:羽咋市 妙成寺

長谷川等伯のグッズ販売

受付横では、長谷川等伯展に合わせ、様々なグッズが販売されています。

長谷川等伯展の記念に、いかがでしょうか。

図録も販売していますので、帰宅のあとも等伯作品の感動の余韻を感じることができますよ。

長谷川等伯展 会期は?

会期は、

2022年4月23日土曜日から5月22日日曜日までとなっています。

開館時間は、

午前9時から午後5時(入場は午後4時30分まで)です。

休館日は、

会期中は無休ですので、休館日はありません。

観覧料は、

一般800円、大高生350円、中学生以下無料

です。

学芸員による特別レクチャー

今回、私がレクチャーを受けた北原洋子学芸員の、特別レクチャーがあります。

レクチャーを受けながらの鑑賞は、絶対にオススメです!

等伯作品の魅力を倍に楽しめることでしょう。

聴講は無料となっています。是非、ご検討下さいね。

長谷川等伯展特別レクチャー【聴講無料】
日時…2022年4月30日(土) 午後2時より約45分(開場:午後1時30分)
定員…先着20名(午後1時30分より整理券配布)
会場…当館アートホール
講師…北原 洋子(当館学芸員)

※やむを得ずイベント内容に変更が生じる場合があります

石川県立七尾美術館について

七尾美術館は、長谷川等伯展をはじめ、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展毎年行われ、県内外からとても人気のある美術館です。

美術館敷地内には桜の木がたくさんあり、春にはお花見スポットとしても有名な場所です。

長谷川等伯展は、これ以上ない価値があるものだと思います。

会期中には是非、七尾美術館に足をお運びくださいね。

長谷川等伯の世界をたっぷりと堪能されてください!

【石川県七尾美術館 長谷川等伯展 詳細】

令和4年度春季特別展

長谷川等伯展 ~水墨・濃淡の妙 VS 着色・彩りの美~

会 期 2022年4月23日(土)~5月22日(日)
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 会期中無休
観覧料 一般800円(700円)、大高生350円(300円)、中学生以下無料
※( )は20名以上の団体料金。
※「国民の祝日」は70歳以上の方は団体料金になります。
※受付にて年齢確認ができるもの(保険証・運転免許証など)をご提示ください。
主 催 石川県七尾美術館[公益財団法人七尾美術財団] 後 援 石川県、石川県教育委員会、七尾市教育委員会、NHK金沢放送局、MRO北陸放送、石川テレビ放送、テレビ金沢、HAB北陸朝日放送、エフエム石川、ラジオななお

石川県七尾美術館

石川県七尾市小丸山台1ー1

TEL  0767ー53ー1500

FAX  0767ー53ー6262

駐車場(無料)
普通車62台+バス4台
優先駐車場2台(楽屋横)

 


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