二度の震災を乗り越えた老舗の挑戦「さいだ花店」地域と歩む復興物語|七尾市

能登半島の中央に位置する七尾市。
この地で1949年の創業以来、人々の暮らしに寄り添い、花を通じて心を豊かにしてきた「さいだ花店」があります。
二度の能登半島地震を経験しながらも、地域に根ざし、未来へ向かって新たな挑戦を続ける三代目代表取締役、齊田晃一さんに話を伺いました。

二度の震災が告げた「変化」の必要性

齊田さんにとって、今回の能登半島地震は二度目の大きな被災でした。
2007年の能登半島地震では、七尾市生駒町にあった旧店舗が全壊。
齊田さんは同じ場所での再開をあきらめ、現在の藤橋町に新たに店舗を建て、2008年2月に「さいだ花店」を再オープンさせました。
そして2024年1月1日、再び能登半島を襲った大規模な地震。
幸いにも、新店舗の建物自体に大きな影響はありませんでしたが、店内の商品は倒れ、駐車場は激しく歪みました。
2ヶ月に及ぶ断水は、水が命の花屋にとって死活問題でしたが、齊田さんは七尾市内の井戸水情報を頼りに水を確保し、市場からも仕入れを継続。
2月にはお葬式の花の依頼も入り、被災地でも「花」が求められていることを実感したといいます。
3月には営業を再開し、少しずつ日常を取り戻し始めました。

予期せぬ「白山店」オープンが拓いた新たな道

今回の地震は、齊田さんの事業計画にも大きな変化をもたらしました。
2023年11月末、白山市にある齊田さんの本家筋の花屋が閉店することになり、その店舗を引き継がないかという打診がありました。
元々は齊田さんの曽祖父さまが白山市で開業した花屋であり、長男であるお祖父さまが七尾で「さいだ花店」を開業したという歴史があります。
倫理実践塾生として売上アップを模索していた齊田さんは、2023年12月20日、その申し出を快諾し、年始からのオープンを予定していました。
七尾のお店はお父さまと奥様に任せ、齊田さん自身は白山店でやっていこうとしていました。
しかし、元日の地震後、野々市の親戚宅に避難していた齊田さんのお父様と奥様が、白山の店舗を運営することになりました。
齊田さん自身は、七尾の店舗の再建に尽力することとなり、当初の予定とは正反対の役割を担うことになりました。

アピタ松任店 Kitten(キットン)

さいだ花店の白山店は、アピタ松任店内に「 Kitten(キットン)」という店名として2024年2月20日に無事オープンを果たしました。
この予期せぬ展開が、さいだ花店の新たな可能性を広げるきっかけとなったのです。

「地震のおかげ」と語る、変革と成長の道のり

地震によって小売事業が立ち行かなくなり、学校へ出向いて花を育てることで命を学ぶ「花育授業」も一時中断を余儀なくされました。
これまで常に齊田さん家族が店にいた「さいだ花店」ですが、白山店のオープンと七尾での再建活動により、齊田さん自身が店を空けることが多くなり、お店の企画運営をスタッフに任せることになったといいます。
「自分たちで動くスタッフ」へと成長した従業員の存在は、この苦境において大きな強みとなりました。
業績が一時的に下がった時期もありましたが、倫理法人会の先生に相談し、学びを深めるために宮城県へも足を運びました。
その学びをすぐに事業に活かし、七尾での新規開拓や、白山店の業績向上にも繋がっていました。
「縁の中で生かされていることを実感しています」と齊田さんは語ります。
街中に花を置く場所が少なくなった現状を踏まえ、積極的に販売の機会を増やしていく考えです。
「今まで通りやっていたらうまくいかない。だから、変えるしかない!」この強い決意が、さいだ花店を徐々に回復へと導いています。
「自分も、家族も、社員も幸せにしたい。いつまでも地震のせいで、とか地震があったから、とか言いたくない。『地震のおかげ』。今があるのは倫理のおかげである」と齊田さんは力強く語ります。

創業の精神を受け継ぎ、地域に貢献する花屋へ

さいだ花店は、1949年5月10日、七尾の青柏祭の直前に、お祖父さまとお祖父さまが生駒町で「ゴザ1枚」から始めた花屋です。
齊田晃一さんは三代目。お祖母さまは初めて置いた花、初めてのお客さまのことを今も鮮明に覚えているといいます。
震災発生直後、一時は商売を諦めかけた齊田さんでしたが、1月3日、お客さんからの「お葬式は出せないけどお花だけでも」という電話が、彼の心を奮い立たせました。生き残った花を、インフラが寸断された状況で届けた経験が、「うちの仕事はなくなってはいけないのだ」とお客さんから教えてもらった瞬間だったと振り返ります。

地域の人々の幸せを願い、これまで観光客ではなく地域の住民を相手に商売をしてきた「さいだ花店」。
今後は、生花の販売はもちろんのこと、花キューピットによる全国発送、出張教室、フラワーアレンジメントなどのワークショップも積極的に展開していく予定です。
また、地震後からスタッフが主体となってアイデアを出し合い、個性を活かせるようになった今の店舗の強みを最大限に活かしていくといいます。
そして、自家生産できるようになった美しいドライフラワーも、色鮮やかに全国へ発送できる新たな商品として期待されています。
「さいだ花店」は、二度の震災を乗り越え、変化を恐れず、地域の人々に花を届け続けることで、七尾の復興を花で彩っていくことでしょう。

企業詳細

さいだ花店
住所 926-0816 石川県七尾市藤橋町未部42−2
電話:0767-53-0755
FAX:0767-53-1077
営業時間:10:00~17:00
定休日 日曜(予約可・行事営業)、祝日(予約可・行事営業)、正月4日間休
配達可能
エリア 七尾市、鹿島郡(中能登町)

 


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