金属加工の一貫生産で能登を支える「大窪鉄工」が大切にする笑顔と真心|宝達志水町

能登半島の南西部、宝達志水町。

この町に、確かな技術力と温かな社風を併せ持つ金属加工会社があります。有限会社 大窪鉄工です。

2代目社長・大窪昌次さんが大切に掲げるのは、笑顔と真心という言葉。その背景には、家族の絆や地域への深い感謝、そして2024年の能登半島地震という未曾有の困難を乗り越えた経験があります。

当たり前の日常がどれほど尊いものか。震災を経て、その想いはいっそう強くなりました。

本記事では、地域と共に歩み続ける2代目社長・大窪昌次さんの言葉を通して、大窪鉄工の歩みと、能登への変わらぬ想いに迫ります。 

伝統を礎に挑戦を重ねる大窪鉄工の歴史

大窪鉄工の歩みは、1990年(平成2年)に現会長の大窪俊光氏が創業したことから始まります。もともとは繊維業を営んでいましたが、時代の変化を見据え、新たな道を選択。鉄工所での経験を積んだのち、独立へと踏み出しました。

当初は、自宅裏にあった繊維業時代の工場を活用し、その場所で溶接を主体とした体制から事業をスタートしました。

1997年(平成9年)10月の法人設立を経て、大きな転換期を迎えたのは2000年頃。

現社長の大窪昌次さんは、高校卒業後、外部での3年間の修業を経て入社。入社から数年後、会社の転機となる大きな決断をします。それまでの溶接(くっつける)主体の仕事から、設備投資を行い切る・曲げる・つなぐまでを自社で行えるよう、仕事の幅を大きく広げたのです。

2019年には本社事務所と最新設備を備えた新工場を竣工。CAD/CAMやタレットパンチプレスといった最新鋭の機械を導入し、設計から製作までを網羅する体制を整えました。この年、昌次氏は代表取締役に就任し、父から子へとその情熱が引き継がれました。 

大窪鉄工の強み|設計から塗装まで金属加工の一貫生産体制

大窪鉄工が多くの取引先から信頼される最大の理由は、その一貫生産体制とスピード感にあります。

1.設計から塗装まで社内完結

金属の切断、曲げ、精密溶接、そして最終工程の塗装までをすべて自社で行います。塗装についても、粉体塗装や焼付塗装、溶剤塗装に対応する充実した設備を保有しています。

2.オーダーメイドに強い金属加工

主な製品は、チップコンベアのフレームや工作機械のカバーなど機械に取り付ける部品です。一品一様のオーダーメイド品やカスタマイズ対応を主軸としています。

3.日本一のリードタイムを目指す理由

大窪鉄工が会社のビジョンとして掲げているのは、日本一のリードタイムを目指すことです。お客様からのご注文から納品までを、日本で最も早く実現できる会社を目標に、全工程の内製化と技術力の向上に日々取り組んでいます。

この高い目標を達成するため、社員の皆さんが自ら話し合って作り上げた行動理念があります。

【社員が考えた行動理念】

その困りごとをなんとかする。そのために私たちは共に創り上げるために努力を惜しまない協力者

  1. お客様の想いに寄り添い、共に創る
  2. 迅速かつ誠実に対応する
  3. 品質への妥協を許さない
  4. 信頼を生むチームワークを大切にする
  5. 行動で示すリーダーシップを持つ

多種多様な人が集まる組織だからこそ、向かうべき目的を共有したい。経営者が一方的に与えるのではなく、現場を担う社員自らが言葉にしたこの指針こそが、大窪鉄工の強靭な骨格となっています。 

若手が定着する理由|ボトムアップでつくる大窪鉄工の組織力

現在、経営を支えるのは社長と、専務である弟さんの兄弟です。社長はの加工技術を極める一方で、専務は修業先で学んだステンレスの加工技術を導入しました。この異なる素材の専門知識を融合させることで、大窪鉄工のモノづくりはさらに多角的なニーズに応えられるようになりました。また、専務は、社長と現場をつなぐ存在として、社員一人ひとりとの対話を大切にするコミュニケーションの要でもあります。

大窪鉄工が大切にしているのは、社長の号令で動くトップダウンではなく、現場の声が経営に届くボトムアップの運営です。社員の意見や気づきが日々の改善につながり、それが働きやすさにも直結しています。

その結果として表れているのが、若さと高い定着率です。現在の社員平均年齢は38。数年前までは30歳前後という、業界内でも際立って若い組織です。

地元・宝達志水町の若者を積極的に採用し、地域で働く場所を守り続けることが最大の地域貢献と考える社長の想いに応えるように、新卒採用された社員のほとんどが離職することなく、長く同社で活躍し続けています。

働く人が増えれば町への税収も増え、結果として地域に還元されていく。そうした循環を大切にしたいと社長は語ります。

実は、会社を建てる際には「採用のことを考えると、もう少し都会寄りの場所のほうが良いのでは」と悩んだこともあったそうです。それでも最後に選んだのは、やはり地元・宝達志水町でした。

「宝達志水町だけでも、大小を合わせると360ほどの事業所があります。周辺の市町まで含めれば、通える範囲に働く場所はたくさんある。知られていないだけなんです」

行政も企業も、そして自分自身も含めて「周知や発信がまだまだ足りていない」と感じているからこそ、商工会などを通じた横のつながりも大切にしています。

地域に根ざし、人を育て、働く場を守る。その積み重ねこそが、大窪鉄工の組織力の源となっています。 

経営理念:笑顔と真心に込めた想い|人を大切にする金属加工会社

昌次社長就任時に作られた経営理念、それは笑顔と真心です。

いい顔・いい人・いい会社を目指し、良いモノづくりを通して、みんなが胸を張れる会社を作り上げよう。

会社を経営する上で、指標や目的は不可欠と語る社長。笑顔は仕事におけるやる気情熱を生み出す源です。社員、その家族、そして地域の方々から「この会社は良い会社だ」と言ってもらえることを目指し、トップダウンではなくみんなで一緒に考えることを大切にしています。 

震災を経験して|大窪鉄工のBCPと防災への取り組み

2024年に発生した能登半島地震では、大窪鉄工にも大きな被害が及びました。海側に位置する工場では、壁面の損壊や機械のズレが発生し、倉庫は内側から外が見えるほど深刻な被害を受けました。本社には、近隣のため池に亀裂が入ったことにより避難指示が出され、一時的に立ち入り禁止となるなど、多大な影響がありました。

 

 

しかし、震災直前に策定していたBCP(事業継続計画)に基づき、LINEを活用した迅速な安否確認を実施。その結果、全社員の無事を確認することができました。一方で、社員の中には奥能登地域に実家があり、家屋が全壊するなど大きな被害を受けた者もいました。

本社が立ち入り禁止となってすぐ、社長は万が一ため池が決壊した場合、事業に大きな支障が出ることを想定し、必要最低限のパソコンやサーバーを速やかに持ち出しました。

地震の揺れによって機械がずれたことによる故障についても、機械メーカーの迅速な支援を受け、早期に復旧することができました。

また、多くの方々から温かいご心配とともに支援金が寄せられました。その支援金は、被災した社員一人ひとりに配られています。

「断水や避難生活を経験し、普通に生きていられることがどれほど幸せなことなのかを、改めて深く感じました。社内の結束も、これまで以上に強くなっています」

震災後、社長は地域ボランティアや消防団の活動にも積極的に従事。自身の経験を通して、地域の安全や支え合いの大切さを改めて実感しているといいます。 

今回の震災を受けて、防災対策としてどのような備えが必要だと考えているのかをお聞きしたところ、社長は次のように話してくださいました。

自身の経験から、全社員の連絡網を整備しておくこと、警察や消防、官公庁など公共機関の連絡先を事前に把握しておくことが重要だといいます。

また、今回は幸いにも会社が休みの日の発災でしたが、業務中に災害が起きた場合を想定すると、命を守るための避難経路や避難場所をあらかじめ明確にしておく必要性を強く感じたと語っていました。 

能登復興の「今」を伝えたい|大窪鉄工から全国の皆さんへ

最後に、大窪社長は全国へ向けてこう語ります。

「能登は今、復旧から復興へと向かっています。元通りになるには時間がかかりますが、私たちはこの地で前を向いて頑張っています。震災前の能登を知っている方も、知らない方も、ぜひ今の能登を見に来てください。能登には美味しいものがたくさんあり、温泉も少しずつですが再開してきています。皆さんが来てくださることが私たちの力になります」

確かな技術、家族の絆、そして地域への愛。

大窪鉄工はこれからも、能登の地で笑顔と真心を込めたモノづくりを続けていきます。 

企業詳細

有限会社 大窪鉄工

代表取締役 大窪 昌次

住所: 石川県羽咋郡宝達志水町南吉田ち13番地1

TEL0767-28-8200

事業内容: 精密板金加工、一貫生産(切断・曲げ・溶接・塗装)、機械加工

会社HPhttp://www.ookubo-tk.jp/

 


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