絶やすな!和倉の灯り〜地域と歩む復興の道〜「和倉温泉郵便局」感動物語| 七尾市

穏やかな時間が流れる和倉温泉の街並み。
しかし、202411日にこの地を襲った未曾有の地震は、多くの人々の日常を一変させました。観光客で賑わっていた温泉街の姿は変わり、復旧・復興への力強い歩みが始まっています。
そんな和倉の街で、120年以上にわたって地域に寄り添い続ける場所があります。
それが、全国的にも珍しい「温泉」の名を冠する和倉温泉郵便局です。

局長の立川尚人さんは、この地域に根ざした郵便局の歴史と、震災を乗り越えようとする現在の取り組み、そして未来への熱い想いを語ってくださいました。

120年続く、地域の郵便局としての使命

「地域の方あっての郵便局です。地域になくてはならない存在になりたい」

1899年(明治32年)に和倉町に誕生して以来、この言葉を胸に、郵便・貯金・保険事業を通じて地域の人々の暮らしを見守ってきました。
1980
年には「和倉駅」が「和倉温泉駅」へと名称変更されたことに伴い、郵便局も和倉温泉郵便局に。
地域とともに歩んできた歴史は、局の名称にも刻まれています。

立川局長が4代目として就任したのは2006年。以来、地域との強い繋がりを大切にしてきました。

「もう、みんな知った仲。世間話もできるんです」

日々の業務の中での、何気ない会話が生まれる温かい関係性。
それは和倉温泉郵便局の何よりの強みです。
顔なじみの人々の生活を支える郵便局として、立川局長は長年、地域との信頼関係を築き上げてきました。

震災直後の決断 「とにかく、開けておきたかった」

2024年11日、能登半島を襲った未曾有の地震。
立川局長は七尾市亀山町の自宅で被災しました。揺れの後、津波警報が発令されたため、家族全員で高台にある能登病院駐車場に避難し、車中泊を余儀なくされました。
郵便局のある和倉町にはご両親が住んでおり、和倉温泉の観光客とともに和倉体育館で2000人規模の避難生活を送っていました。

ご自身の郵便局のある和倉町の状況が気になりながらも、夜間の道路の崩壊で身動きがとれず、翌朝まで待つことに。
夜が明け、郵便局に向かうと、建物は倒壊こそ免れたものの、半壊状態でした。
内部はひっくり返したようなひどい有様だったといいます。

職員全員の安否を確認し無事がわかったところで、次に考えたのは、郵便局を再開することでした。

「とにかく、開けておきたかった。地域の人のために」

通常であれば14日から業務開始のところ、水道や電気が止まり、和倉町全体で断水が3ヶ月も続くという状況。
多くの企業が営業再開の目処が立たない中、立川局長は地震からわずか9日後の110日、業務を再開しました。

被災後でそれどころではない人も多い中、それでも開けておくことに意味がある。
その強い想いが、この迅速な再開を可能にしました。

ATMも必要になるだろうし、この郵便局では住民票がとれるし、各種手続きもできる。地域の人のためになることをし続けたかった」

日々の生活を支える郵便局の機能を、一刻も早く取り戻すことが、住民の安心につながると信じていたのです。

「住民を一番把握しているのは郵便局」〜防災拠点としての役割〜

今回の震災を経験し、立川局長は改めて郵便局の持つ特別な役割を痛感したといいます。

「郵便局にはもともと職員数分の水や食料、簡易トイレなどの備蓄品がありました。しかし、被災時は自宅にいた職員ばかりだったんです」

この経験から、立川局長は「この備蓄品は職員数だけでなく、地域の人々の分もあれば良いと思った」と語ります。

「地域に必ずある郵便局に、住民の備蓄品があれば、良い防災拠点になると思います。水、食料、毛布など、ここだけの話ではなく、全国の郵便局でもそうあって欲しいと思います。なぜなら、住民を一番把握しているのは郵便局だからです!」

住民の住所や家族構成といった個人情報を把握しているだけでなく、日々の配達業務や窓口での対話を通じて、それぞれの家庭の状況を誰よりも知っている。
郵便局は単なるインフラではなく、地域コミュニティの中心であり、緊急時には最も有効な情報拠点となりうる。
立川局長は、この郵便局の「強み」を活かした、新たな防災のあり方を提言しています。

また、立川局長はいまだ整備途中の和倉町の道路について言及します。

「道路工事において、歩道の整備が後回しになっています。視覚障碍者がいる和倉温泉街において、とても危険なことです」
和倉温泉街は、視覚障碍者の方が「あんまさん」と呼ばれるマッサージ師となり旅館に出張することが多い場所です。
視覚障碍者の方が安全に歩行するために、早急に必要な整備が求められます。
ずっと地域に寄り添っている立川局長ならではの視点です。

全国からの支援と「郵便局ネットワーク」

震災後、全国の郵便局関係者から次々と支援物資が届きました。
しかし、奥能登へ向かう道は寸断され、物資を運ぶことすら困難な状況でした。

「奥能登に届けたいが道がだめで届けられず、ジレンマもありました。個人でトラックを借りて持っていける郵便局まで行きました」

立川局長は、被災地の厳しい状況を目の当たりにしながらも、諦めませんでした。

「幸い、郵便局のネットワークは津々浦々にある。この郵便局からあの郵便局へ、とスムーズに物流が動いたんです。これが郵便局の最大の強みだと思います」

全国の郵便局という強固なネットワークを最大限に活かし、届いた物資は職員だけでなく、道が開通し次第、さらに奥の郵便局へと届けられました。
その物資は、地域の住民にも配られました。

「郵便局はそれで良いと思うんです。地域に寄り添う郵便局ですから」

立川局長の言葉には、使命感がにじみ出ています。

地域への恩返しと未来への展望

「復興はまだこれから」と語る立川局長。
昨年4月から和倉温泉商店連盟の会長に就任し、この地で120年以上も郵便局を続けさせてもらった恩返しの気持ちから、率先して街の賑わいを取り戻すための活動を続けています。

震災後には「テント村」を立ち上げ、その後も仮設店舗の設営や賑わい創出として、和太鼓、ドローンイベントといった様々な企画を積極的に行っています。

「和倉温泉の花火は有名ですが、護岸が被災しているので今年はできないんです。その代わりになるような、子供たちの思い出になるイベントを色々考えています」

街の賑わいを創出しながら、これまでの和倉温泉を盛り上げてきた年配の方々と、これからの和倉を担う若手をつなぐ役割も担う立川局長。
今後の復興には「新しい視点で見られる若い力が必要」だと語ります。

「若い力が必要。七尾市内外、県内外問わず、新しい視点で見られる和倉をつくってもらいたい。今後インバウンドも増えるし外国人もよいですね。復興が進み、良い段階にすすんだら、次の世代に会長職をバトンタッチしたい」

そして、和倉の未来に対する強い希望を語ります。

「被災地を元に戻すのではなく、さらに進化した和倉温泉になればいい」

この言葉は、単なる復旧にとどまらない、より良い未来を目指す強い意志の表れです。

息の長い応援を

最後に、この記事を読んでくださる全国の支援者に向けてメッセージをいただきました。

「ご支援ありがとうございます。支援にこたえるために頑張ります。まだまだ長い道のりですが、息の長い応援をよろしくお願いいたします

立川局長は、この困難な状況を乗り越え、未来へと歩み続ける和倉温泉の「灯り」を守り続けています。その熱い想いは、きっと和倉の復興を支える大きな力となることでしょう。

和倉温泉の今後のイベントや、復興の様子は和倉温泉の様々な団体のSNS等でチェックすることができます。
ぜひ、和倉温泉の頑張る姿に、温かいご声援を送ってください。

和倉温泉郵便局 詳細

和倉温泉郵便局 
局長:立川尚人
住所:七尾市和倉町ワ部18-2
電話:0767-62-2990
休日:土日祝日
営業時間:
郵便窓口 9:00~17:00
貯金・保険窓口 9:00~16:00
ATM 8:45~18:00


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