能登の未来を描く建築士「奥能登アーキ」震災からの復興設計物語|輪島市

令和6年元日に発生した能登半島地震。
その爪痕が今も残る輪島市で、地元の建築士として復興への道を歩む「奥能登アーキ」を訪ねました。
お話をうかがったのは、一級建築士の越田純市さん。震災直後のご自身の体験、地域を支える建築の仕事、そしてこれからの能登への想いまで、じっくりと語っていただきました。 

輪島市・門前町より、復興と地域再生への思いを込めて

2021年、輪島市河井町で創業した建築事務所「奥能登アーキ」。一級建築士の越田純市さんが手がける設計は、歴史的建造物の再生から新築住宅まで、地域に根ざした幅広い建築に対応しています。

能登に移住したのは2018年。金沢出身の越田さんが輪島市河井町に拠点を構えたのは、奥さまのお仕事が輪島市にあったことがきっかけでした。

奥能登では、建築士が減ってきていることもあって、地域の未来には建築士の存在が欠かせないと思いました。それが輪島市で創業する理由のひとつでもあります。

地震という節目

令和6年元日、能登半島を襲った震災。越田さんはご自宅、奥さまは職場と別々の場所で被災しました。輪島市河井町の自宅も仕事場も被害を受け、生活の基盤は一変。ご夫婦は地震のあった次の日の2日に合流。一旦、金沢市に避難しましたが、偶然地震前に購入していた輪島市門前町黒島の住居を新たな拠点に。今ではそこが事務所兼住まいになっています。現在のお住まいは、目の前に海が広がる場所にある古民家です。そちらをリノベーションされ能登の景観を楽しむことができ自然に調和した建物です。

電気は比較的早く復旧しましたが、水道が使えるようになったのは半年後。水道の本管は復旧したものの、宅内の水道工事に時間がかかりました。お風呂は、近くの公民館にある自衛隊の入浴施設を利用し、トイレにも苦労された日々。それでも嬉しかったのは、周囲の人々の支えでした。同じく被災している友人たちが、入浴支援や食事を快く提供してくれたことに、「能登の人の優しさ、動じなさを改めて感じた」と越田さんは微笑みます。

仕事ゼロからの再出発

建築士としての仕事が100%能登地域だったこともあり、震災前から抱えていたプロジェクトはすべて白紙。「半年ほどは仕事どころではなく、ボランティア活動や家の片付けなどの日々でした。生活するだけで精一杯でしたね」

建築士が少ない奥能登。震災後の復旧や再建には建築士としての専門的な知識が不可欠です。越田さんは「この地域を見放すことはできない。この地域を離れようとは思いませんでした」と語ります。奥様は、市役所関係の仕事だったことから震災直後からずっと仕事をしていました。ご夫婦それぞれの立場で地域を支え続けてこられました。

これからの能登と建築のあり方

復旧が進む一方で、人口の減少や人材不足も課題に。令和74月には建築基準法の改正となり、これからは建築士の存在が一層求められます。建築確認申請をできるのは建築士のみ。そして、建築基準法が改正されたことにより、今まで申請しなくても良かった建物に関しても、申請をしなければならなくなったことから建築士の存在がますます必要となってくるのです。

「建築確認申請が必要な案件が増える今、建築士の役割は重要です。確認申請は地元の自治体にするのですが、能登の管轄の自治体の建築主事が不足している為、通常であれば建築確認申請の許可が下りるまでに23週間だったものが、現在は34ヶ月かかることも。建築確認申請の許可が下りなければ建てることができません。これが復興のスピードを遅らせている原因の1つでもあります。」 

仲間を求めて

現在、越田さんは、設計から模型づくり、事務手続きまで一人でこなしています。そんな中、奥能登アーキでは金沢や富山など近隣地域で建築業務をサポートしてくれる方を募集中。輪島の事務所に月に12回程度訪問し、あとはリモートでもいいので手伝いをしてくださる建築士の方。その他に、資格の有無は問わないので、模型作りやデザインに興味がある方、簡単な事務作業ができる方。こちらも、輪島の事務所に月12回程度訪問し、あとはリモートでも対応可能です。「勉強がてらで大丈夫。能登の復興に関心がある方と一緒にやっていければ」

未来への提案

建築物の提案だけでなく能登ならではの暮らし方の提案までできたらいいなと思います。少しでも環境が良いところ、例えば、海の見える場所、少し離れた所に山が見える場所など景色を楽しむことのできる建築の提案ができればといいなと思います。「能登はまさしくそれが実現できる場所」。越田さんは、地域密着型の建築を軸に仕事をしていきたいと話されます。また、奥能登アーキは全国からの依頼にも対応しています。越田さんの願いは、この仕事を通して「能登に住みたい」と思う人が増えていくこと。そのために能登の建築の良さを広く発信していきたいとのことです。

全国の皆さんへ

「ぜひ、今の能登を見に来てください。そして関心を向けていただければ嬉しいです。能登では事業継承が必要な職種、業種もあると思います。能登ならではの仕事もあると思います。能登での仕事も考えてもらえると嬉しいです。皆さんの支援と共感が、能登の復興に力を与えてくれると信じています。」 

企業詳細

奥能登アーキ 合同会社Okunoto Architects

代表社員/一級建築士

歴史的建造物修復士

越田 純市

住所 石川県輪島市門前町黒島町ロ1122

ホームページ https://www.okunoto-archi.com/

 


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