
令和6年1月1日。
石川県能登地方を襲った大地震は、輪島市三井町にも大きな爪痕を残しました。
その中で、「暮らし」をキーワードに地域と深く関わりながら、前を向いて進む人がいます。
それが、「株式会社百笑(ひゃくしょう)の暮らし」代表であり、一般社団法人「のと復耕ラボ」の山本亮さんです。
Contents
「訪れた場所」が、「生きる場所」へ
山本さんが三井町に出会ったのは、大学時代のゼミ合宿。
その風景と人のあたたかさに惹かれ、2014年、地域おこし協力隊として移住しました。
2018年には「里山まるごとホテル」を立ち上げ、地域全体をひとつの「ホテル」に見立てた新しい宿泊のかたちを実現。
築170年の古民家を再生したレストラン「茅葺庵 三井の里」では、地元のお母さんたちがつくる郷土料理、能登特有の発酵調味料「いしる」を使った郷土料理が人気でした。和紙づくりや地元食材の料理体験、リノベーションした一棟貸しの古民家での宿泊など、訪れる人にただ泊るだけではない能登の暮らしにふれる滞在、里山の豊かさを五感で体験することを伝えてきました。それがとても魅力的なものでした。


地震とともに、すべてが止まった―けれど


地震の起こった元日、山本さんは東京に帰省中。
輪島には戻れず、町の状況も分からない日々が続きました。戻れない間も、東京でできることを考え2次避難の支援などをしました。
そんな中、友人から「震災前から親交のあった福井県の自伐型林業団体「ふくい美山きときと隊」が災害支援で入ってくれるのだが、活動拠点がなくて困っている」との連絡が入ります。
東京から戻れる目処も立たないまま、「それなら茅葺庵を使ってください」と応じた山本さん。
それが、復興への一歩になりました。
そこから、民間ボランティアセンターとして茅葺庵三井の里は動きだしました。震災後から現在までに受け入れたボランティアの延べ人数は約4000人です。ここを拠点に多くの皆さんが能登の支援に入ってくださいました。大変ありがたいことです。
とはいえ当初は、7割方「能登を離れるつもり」だったと言います。
しかし、春が訪れ、田んぼの準備を始める地域の人々の姿に、心が動きます。
「自然に寄り添って生きるたくましさに触れ、ここでまたやってみようと思ったんです」
薪で暖を取り、山水で風呂を沸かし、正月の食料をみんなでシェアして大切に使い切て被災後の緊急期を乗り切った。
そんな「暮らしの知恵」と「コミュニティによる支えあい」が今も息づいている能登。そして、これまで築いてきた地域の人々との繋がり、ボランティアに来てくれた人の「能登っていいよね」という言葉、震災後から二人三脚で活動してくれた仲間、山本さんたちの活動をサポートしてくれる人材が集まってくれたことで、ここで未来をつくる可能性があると確信したのだそうです。
「いま、やりたいことをやる」─レストラン再開よりも優先したこと
「レストランの再開は焦らなかった」と語る山本さん。

地震をきっかけに芽生えたのは、「やりたいことをやろう」という想い。
「食」「エネルギー」「水」「木材」を自分たちで自給する。
そんな循環型の暮らしの基盤を、茅葺庵を拠点に築き始めました。
これまで地縁や血縁の中で支え合ってきた里山を、「やりたい」「好き」という想いで集まる人たちが支え合う新しい形、現代の「結(ゆい)」をつくりたいと語ります。
「消費」ではなく、「共につくる」暮らしへ
「里山まるごとホテル」時代も、体験やガイドなどを通じて暮らしの魅力を伝えてきた山本さん。
けれど、どうしても「提供する側」と「受け取る側」という枠を超えることは難しかったといいます。
だから今は、「共につくるフィールド」へとシフトしています。
具体的には、自伐型林業の実践。
昔は自分の山は自分で手入れしていた。そんな知恵を、今の暮らしに合うかたちでアップデート。
薪の確保やエネルギーの自給を、仲間とともに実践しています。
また、解体予定の古民家から貴重な素材をレスキューする「古材レスキュー」も始動。
漆の床材や柱など、古き良きものを活かし、新しいものにアップサイクルする取り組みも進めています。
「復耕」という言葉に込めた想い
「もう一度、耕す」という意味の「復耕」。
ただ過去に戻るのではなく、昔の知恵に新しい風を入れて、今の時代に合う形へ進化させていく。
この考えのもと、山本さんたちは古民家の再生にも取り組んでいます。
すでに4軒の古民家の解体を止め、利活用の可能性を探っているそうです。
中には、自分たちで修理・運営できるものもあれば、資金が必要な案件も。
そのため、「一緒に取り組んでくれるパートナーを探しています」と、地域の外にも積極的に呼びかけています。
「また人が来てくれる」その喜びと希望
レストランとしての再開も、「どのように行うのがいいのか」と少し頭になげかけが生まれるようになったが、今は茅葺庵周辺を「人が交流でき、循環型の暮らしを実践し、滞在できる場所」に再構築しているところです。
たとえば、茅葺庵の近くにある古民家福島邸を宿泊施設にする構想。震災前から福島邸は集会所やコワーキングスペースとして活用していました。
地下水を使った露天風呂も、自分たちの手でDIYしたいという想いがあります。
そして、ボランティアから「復耕サポーター」へ。
一緒に未来をつくってくれる人を募集しています。
現在、復耕ラボ内でボランティアの方々が宿泊できるスペースです。可愛く絵が描かれたテントはお風呂です。


こちらのテントは、コワーキングスペースです。


「技術を持つ暮らし」が、これからの能登をつくる
山本さん自身、震災後にチェーンソーの使い方を初めて学んだといいます。
「薪ストーブのある暮らし」にあこがれていたけれど、それを実現するには「暮らしの技術」が必要だったのです。
「そういう技術を育てる人材育成を、どれだけ能登はしてこれたのか。これからはそこが大切だと思うんです」
だから、「里山の暮らしをしたいなら、能登だよ!」と言われる地域を目指しているそう。
「能登の住民の半分がチェーンソーを持ってたら、楽しい能登になると思いませんか?」と笑顔で話してくれました。
最後に、全国の皆さんへ
「来なきゃ損!」
今この瞬間、復旧・復興の真っただ中にある能登を見て、感じてほしい。
ここでの経験が、自分の生きる力を高めるきっかけになります。
今しか見られない景色、今しか聞けない声が、ここにはあります。
今、来てくれることで支援につながることもある─だから、ぜひ「今」来てください。
自然と寄り添い、仲間と共に暮らしを耕す。
そんな生き方が、能登には、茅葺庵には、息づいています。
「復耕」は、もう始まっています。
次は、あなたが「加わる番」かもしれません。
企業詳細
株式会社百笑の暮らし・一般社団法人のと復耕ラボ
代表 山本 亮
住所 石川県輪島市三井町小泉 漆原14-2
HP:https://sites.google.com/view/noto-fukko-labo/home
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