石丸工業・石田憲司さんが語る、能登の道と次の世代へ托す念い|七尾市

能登半島地震から2年余り。 復旧工事が続く道を毎日走りながら、「この道、数年後にまた壊れるかもしれない」と心の中で思うことがある、と石田憲司さんはさらりとおっしゃいました。

それは批判でも嫌みでもなく、30年以上この仕事を続けてきた方だけが持てる、静かで深い確信でした。

石田さんが現場のリーダーを務める石丸工業株式会社は、石川県七尾市を拠点とする舗装工事会社です。能登半島地震の災害復旧工事を含む、地域のインフラ整備を担っています。

仲間たちが守った、あの頃の能登の道

2024年元日。石田さんは体調を崩し、ご自宅で療養中でした。突然の大きな揺れが能登を襲い、自宅は半壊。その後、公費解体となりました。ご家族は帰省中で無事でしたが、石田さんおひとりが被災した自宅に残されることになりました。

発災直後から復旧に携わる企業の方々には、これから先、かなり厳しい状況になることが伝えられたそうです。実際に石丸工業の社員の皆さんは、懸命に能登の道を守り続けてくれていたそうです。
翌2日には、七尾鹿島建設業協会に属する建設会社が参集し、道路管理者である石川県、七尾市などからの指示を仰ぎ、災害復旧工事施工班として動きます。

物流の命綱である道路の応急処置、ガソリンスタンドや病院へつながる道の段差をとにかく平らにする作業。食料や燃料を届けるトラックが走れるように、昼夜問わず対応した日々。24時間体制で電話に対応し続けた時期もあったことなど、石田さんは社員の皆さんの奮闘ぶりを語ってくださいました。

「道路が通れないと、コンビニのお弁当も届かない。ガソリンスタンドも機能しなくなる。県道や市道の路面を継続維持する。そういう世界なんですよね、私たちの仕事は」

石田さんが現場に戻られたのは昨年11月のこと。数年のブランクを経ての復帰でした。現在は石丸工業のかじ取り役を義理の弟さんに任せ、石田さん自身は毎日現場に出て現場監督として指揮を執られています。

アスファルト舗装の損傷には、26種類のひび割れがある

石田さんが取材中に教えてくださったことを少しご紹介させてください。

みなさんは、道路のひび割れをじっくりご覧になったことがあるでしょうか。「割れているな」とは思っても、「なぜ割れているのか」まで気にする方は、ほとんどいらっしゃらないと思います。

「実は、道路のひび割れには26種類あるんです」

そうおっしゃったとき、石田さんの目がほんの少し輝いたように見えました。

上から入るひび割れ、下から押し上げてくるひび割れ、途中で止まっているもの、貫通しているものなど、見た目は似ていても、原因はそれぞれまったく異なります。そして、治し方も当然変わってくるのだそうです。

「原因を診断せずに同じやり方で直しても、数年後にまた割れてしまう。それでは意味がないんですよね」

石田さんが登録されている舗装診断士という資格は、全国でもわずか2,500人ほどしかいない希少なもの。石川県内には20人いるかどうかというレベルです。道路のひび割れを診断し、その原因から最適な修繕方法を導き出す、いわば、道路のお医者さんのような仕事といえるかもしれません。

「お医者さんでも、専門医がいますよね。道路も同じで、専門的に診られる人が現場にいるかどうかで、仕上がりがまったく変わってくるんです」

30年以上の現場経験と専門資格が掛け合わさった石田さんの「診る目」は、図面や数式だけでは生まれないものだと、お話を聞きながら感じました。

復旧が続く能登の道の、今

震災後の能登を走ると、あちこちで工事が続いているのがわかります。一見、着々と進んでいるようにも見えますが、石田さんはもう少し複雑な現実を教えてくださいました。

「道路の工事は、管轄によって発注者が変わります。国道は国交省、県道は石川県、市道は市。会社そのものが格付けされているため、私たちが入れる工事と、大手舗装会社(技術研究開発力のある13社)や県内舗装Aランクの舗装専門会社しか手がけることができない工事があるんです」

たとえば、現在整備が進む能越自動車道の延伸工事は、国の予算で動く大規模なもの。石丸工業が担うのは県道や市道の舗装・補修工事です。どちらも能登の復旧に欠かせない仕事ですが、規模も発注の仕組みもまったく異なります。

「工事の予算はある。でも、やれる人手が足りていない

これが今の能登の現場の実情だそうです。全国各地から業者が集まっているにもかかわらず、それでも追いつかないほどの工事が積み上がっており、能越自動車道の工事エリアでは朝の渋滞が今も続いているとのことです。

石川県初!地震に備える特殊工法「HRB工法」を手がける

石田さんが現場で取り組んでいる工事のなかで、特にご紹介したい技術があります。舗装業界の最大手NIPPOが開発した「HRB工法(Hazard-Reducing Bed)日本語でいうと「地震対策型段差抑制工法」です。この工法の施工を、石丸工業は石川県で初めて手がけました。

HRB工法は、地中深くにアンカーを差し込んで固定し、強度の高いジオグリッド(格子状のシート)と特殊なゴムマットを何層にも重ねることで、地盤が動いても道路面の段差を最小限に抑える構造をつくります。地震直後でもトラックや緊急車両が走り続けられる道を、あらかじめ準備しておく工法なのです。


「タンクローリーや支援物資のトラックが、被災地にスムーズに乗り込めるように対策された工法です。コンビニのお弁当ひとつ届けるにも、道が通じていないと話にならない。あの震災で、みんな身に染みてわかりましたよね」

七尾市西三階で施工したこの工事では、作業員が道路面にひとつひとつ丁寧にアンカーを打ち込み、グリッドを敷設していく様子が印象的です。

見えない土台に最新の工法を用い、数ミリの妥協も許さない熟練の平坦性で、次の震災で誰かの命や暮らしをつなぐかもしれない道を作る!
そう思うと、現場の光景がまた違って見えてきます。

この作業の様子は、見る人が見れば、石丸工業さんの技術の高さ誠実な施工が伝わるものだそうです。
地震が起きると、道路はさまざまな場所で段差が生じます。大きな段差ができてしまうと、物資を運ぶタンクローリーや支援トラックが通れなくなり、燃料も食料も届かなくなってしまいます。実際能登半島地震でも、まさにそういった状況が起きました。

写真の穴水漁港付近の道路のように、能登ではこのように激しく損傷した道路がたくさんありました。こうした現実を目の当たりにするたびに、石田さんたちの仕事の必要性をあらためて感じます。

また、輪島市内では民間の舗装工事も並行して進んでいます。

地域に根差しながら、大手の最新技術も取り入れた施工ができるのは、石丸工業の実績と技術力によるものなのでしょう。

次の世代に、この技術を

石田さんが今、一番力を注いでいることがあります。それは、現場で一緒に働く若い社員たちを育てることです。

「私がいつまでも現場にいられるわけじゃない。自分が持っている技術や経験を、次の人たちに渡していかないと意味がないと思っています」

現場監督という仕事は現場のリーダーです。職人さんたちをまとめ、品質を守り、工期を守る。その中で、石田さんは、若い人たちの仕事ぶりを見ながら、少しずつ判断の仕方を伝えていくのだそうです。叱ることも、本音でぶつかることもある。でもそれは、仕事への真剣さの裏返しでもあるのでしょう。

「彼らにも人生がある。その人生に関わらせてもらっている、という気持ちでいつも向き合っています」

倫理法人会での学びも、石田さんの根底にあるそうです。「財を残すのは三流、名を残すのは二流、人を残すのが一流」。そんな言葉を自分自身に言い聞かせながら、今日も現場に立っていらっしゃいます。

能登を拠点に、全国へ

石田さんが描いている未来のかたちがもうひとつあります。

能登に住んでいても、全国で仕事ができる

舗装診断士としての専門技術は、地域を選びません。大規模な工事の現場監督マネジメントを担う形であれば、福井県や富山県の工事に関わることも十分に可能で、実際にそういった話が来ていることもあるとか。

「自分一人がそれをやっても意味がなくて。若い人たちが、能登を拠点にしながら全国で技術を活かせる、そういう働き方のモデルを作っていきたいんです」

能登を離れなくても、能登にいながら、しっかりとしたキャリアと収入を得られる、そんな選択肢を建設業界の中に作っていくこと。それが、能登の未来への石田さんなりの答えなのかもしれません。

道が通じることで、人がつながる

取材の最後に、石田さんはこんなことをおっしゃっていました。

「道を直していると、いろんな人に会えるんですよね。困っている方、移住してきて頑張っている方。道が通じることで、人もつながっていく気がします」

石丸工業がある七尾市から、輪島へ、穴水へ。能登北部のあちこちへ、今日も現場は続いています。ひび割れを診て、段差を直して、人と物の行き来を支える。派手ではないけれど、なくてはならない仕事です。

能登の道を誰よりも熟知した舗装・土木施工管理技術者が、仲間と後輩と、そして能登の未来のために、今日も現場に立っていらっしゃいます。

石丸工業株式会社 企業詳細

所在地 石川県七尾市府中町162(七尾営業所)
電話番号 0767-53-5684
公式HP 石丸工業 株式会社 | 石川県七尾の舗装会社


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