
能登半島の入り口、石川県羽咋(はくい)市。 千里浜の美しい海岸線からほど近いこの町で、長きにわたり地域の暮らしを頭上から守り続けている会社があります。
創業から90年以上を数える杉本瓦工業株式会社。3代目社長の杉本孝丸(すぎもと たかまる)さんに、受け継がれてきた伝統、住まいを守るプロとしての仕事、そして能登半島地震を経て新たにした決意について、じっくりとお話を伺いました。
Contents
昭和8年創業。羽咋の赤土から始まった屋根工事と瓦づくりの歩み

杉本瓦工業の歴史は、今から90年以上前の昭和8年(1933年)にさかのぼります。 創業者は、杉本社長のおじいさま。当時は、ここ羽咋市周辺でも良質な赤土が採れたことから、瓦の製造工場としてスタートしました。
のちに、「自分たちが作った良い瓦なのだから、自分たちの手でしっかりと屋根に葺いたほうが、お客様のためになるのではないか」。ということで、施工も手掛けるようになりました。
転機が訪れたのは、昭和58年のこと。さらに、世の中で次々と新しい高性能な瓦が開発される中、「ならば私たちは、その良い瓦を最大限に活かす施工の技術を磨き、良い職人を育てよう」と決断。
瓦を作る会社から、瓦を葺き、家を守る工事専門会社へ。形は変わっても、地域の人々に良い屋根を届けたいという情熱は、創業時から変わらず脈々と受け継がれています。
屋根工事から外装まで。住まいを守るトータルサポート
瓦屋さんと聞くと、屋根の瓦だけを扱っているイメージがあるかもしれません。しかし、杉本瓦工業さんの事業は、屋根だけにとどまりません。屋根、板金、外壁、雨どいなど、住まいの外装全体をトータルでサポートされています。
【主な事業内容】
- 屋根工事・瓦工事
新築住宅の瓦葺きから、古くなった屋根の葺き替え工事、部分的な修繕まで。日本瓦だけでなく、現代の多様な屋根材に対応しています。
- 屋根リフォーム・点検
雨漏りが心配、瓦がずれているかもといった不安を解消するための点検やメンテナンス。
- 外装工事・住まいのトータルサポート
屋根だけでなく、外壁のリフォーム、雨樋(あまどい)の交換・修理、板金工事、さらには太陽光パネルの設置まで。
「お客様の『安全・安心・快適そして防災』を支えたい」 その想いから、屋根の上だけでなく、家を雨風から守る外回りのプロフェッショナルとして、幅広い技術を提供されているのです。
企業理念Make Tomorrow Better、明日をもっと良くするための想い

そんな杉本瓦工業さんが大切にされているスローガン、それがMake Tomorrow Better(明日をもっと良くする)です。
ただ修理するのではなく、そこに住む人の明日がもっと良くなるように。そのために大切にしているのが、技術と人間性の二本柱です。
「全く同じ家なんて一つもありません。だからこそ、毎年同じことをしていてはダメなんです。社員一人ひとりが常にアンテナを張って最新情報を収集し、目の前の現場に合わせてベストな方法を考える。人の成長こそが、会社の成長なんです」と社長は語ります。
瓦という素材自体は半永久的なものですが、それが40年もつか50年もつかは、施工する人にかかっているのだそう。確かな技術と、お客様を想う心意気。その両輪があるからこそ、地域からの信頼が厚いのも納得です。
能登の屋根施工の匠、神社仏閣も手掛ける信頼の瓦工事技術
実は、能登の屋根には、この土地特有の技術が必要だということをご存知ですか? 寒暖差が激しく、雨風も強い能登。昔ながらの工法では、瓦を一枚一枚銅線で縛って固定していたそうです。
瓦一枚一枚を銅線で固定する能登の方法は、当時の建物に粘り強さをもたらし、雨風、されには地震に対しても崩れにくいという特性を持っていました。
現在は、ステンレスで全数固定する最新のガイドライン工法が主流になっていますが、杉本瓦工業さんでは、こうした最新の基準を遵守するのはもちろん、長年の経験で培った「能登の気候に合わせた施工」を行っています。
その技術力の高さを示すのが、一般住宅だけでなく、神社やお寺の屋根修繕も手掛けていること。「氷見の有名な宮大工さんからも信頼していただいています」とのお話通り、社寺建築という高度な技術が必要な現場でも、リーダーとなる職人さんが活躍されています。
屋根復旧。お客様を守る正義感と迅速対応
令和6年能登半島地震。 発災当時、杉本社長は奥様のご実家である京都にいらっしゃいました。ニュースで惨状を知り、翌1月2日には家族を京都に残し、車で羽咋へ戻られました。
「去年は、本当にしんどかったですね…」 社長がそう振り返るほど、震災直後の現場は壮絶でした。会社に戻ると電話は鳴り止まず、まずは雨漏りを防ぐためのブルーシートをかける応急処置の依頼が続々と。その作業はなんと4月いっぱいまで続いたそうです。
さらに心を痛めたのが、混乱に乗じた悪質な業者の存在でした。「高額な現金を要求したり、適当な処置で逃げてしまったり…。中にはうちの下請けだと嘘を名乗る業者までいて、本当に悔しい思いをしました」
そんな中でも、杉本瓦工業の職人さんたちは頑張りました。「杉本さんのブルーシートのかけ方は、他とは全然違うね」 あるお寺の方からそう言われたように、専門家として、建物に合わせた丁寧な養生(応急処置)を徹底しました。養生をしっかり行うことで、お客様は安心して次の修繕の打ち合わせができるからです。




杉本瓦工業さんでは、普段から自社で5つのチームを編成して業務にあたっています。しかし、今回の震災による被害はあまりにも甚大でした。 そこで、県外の3〜4社の瓦業者さんが交代で駆けつけてくださり、応援部隊としてさらに1チームが加わってくれたそうです。自社の5チームに加え、この心強い応援チームと力を合わせ、少しでも早くお客様の不安を取り除けるよう、懸命な作業を続けました。
公共施設からの依頼も多いのは、こうした組織力と、安心して任せられる確かな技術があるからこそでしょう。「お客様から『ありがとう』と手を合わせていただいた時、それが一番の励みになりました」 職人さんたちのモチベーションを支えたのは、やはりお客様からの感謝の言葉でした。



(写真提供:杉本瓦工業)
震災支援で発揮するネットワーク力。組織の枠を超えた復興支援
今回の震災で、社長が改めて感じたのが人と人との繋がりの大切さでした。 所属されていた青年会議所(JC)の仲間たちや地元の友人たちが、すぐに支援に駆けつけてくれたのです。
「震災直後、直ちにJCの仲間と話し、羽咋(私の会社)と七尾を拠点にして、奥能登への支援ルートを作りました。水や食料だけでなく、瓦屋の視点から『ブルーシートや土嚢袋が必要だ』と伝え、全国のJCの仲間から届けてもらいました」
知った顔が支援に来てくれることの安心感。組織の枠を超えた連携が、情報の収集を早め、復興のスピードを上げると実感されたそうです。
能登の屋根復旧と未来への挑戦。明日をもっとよくする取り組み
屋根の復旧には、一般住宅に関してはまだ1年ほどかかる見込みです。「お待たせしているお客様に、できるだけ早く対応していきたい」と語る杉本社長。
これからの能登の復興に向けて、そして企業として続けていくために大切なことは、「やはり、技術の向上と人の成長です」と力強く答えてくださいました。 新しい技術を取り入れ、業界全体の底上げを図ることが、結果として能登のまちづくりにも繋がっていく。社長の視線は、屋根の上から地域の未来を見据えています。
全国の皆様へメッセージ
「能登へ心を寄せていただき、本当にありがとうございます。 私たちは、この地域で90年以上仕事をさせてもらっている責任と感謝を大切にしています。 復興にはまだ時間がかかります。だからこそ、これからも能登を含め石川県に、どうか細く長く、引き続きのご支援をお願いいたします」
企業詳細
杉本瓦工業株式会社
代表取締役 杉本 孝丸
住所:石川県羽咋市一ノ宮町レ100番地
TEL:0767-22-0625
HP:http://sugimotokawarakougyou.jp


















