能登の水産業は死んでない!「すぎ省水産」漁師と共に挑む復興物語|七尾市

能登半島の豊かな海が育む、四季折々の海の幸。その恵みを全国の食卓に届けてきた「すぎ省水産株式会社」もまた、今回の能登半島地震で甚大な被害を受けました。

しかし、代表取締役社長の笹本和茂さんは、震災直後から力強く前を向き、能登の水産業の未来のために走り続けています。そこには、過去の支援の経験から生まれた、熱い信念がありました。 

能登の漁師さんと共に。鮮度と想いをつなぐ仲卸の誇り

すぎ省水産のルーツは、昭和23年に漁師町・七尾市石崎町で創業した海鮮問屋「かねしげ」にあります。笹本社長の義父である現会長が昭和60年に「すぎ省水産」を立ち上げ、平成27年に「かねしげ」と合併。合併したことにより、すぎ省水産として大きく飛躍しました。以来、能登の豊かな海の恵みを、仲卸業や水産加工品の製造販売として全国へ届けてきました。

能登の魚は、種類が豊富で品質がとても良いものばかりです。主な商品は、「能登なまこ」や「能登ふぐ」、もずくなど、能登で獲れる品質の良い鮮魚全般。そのこだわりは、仕入れの姿勢に強く表れています。

「私たちは、漁師あっての水産業だと思っています。だからこそ、漁師さんの仕事が長く続くように、できるだけ良い値でお魚を買わせていただくことを大切にしているんです」

独自のルートで漁師さんから直接買い付け、最高の鮮度でお客様へ届ける。その手作業で作られる商品の数々は、ミシュランの星を持つ料理人からも認められるほど。

「生産者である漁師さんの想いと、お客様をつなげたい」。その一心で、日々の仕事に向き合われています。

 

「能登は動いている」と伝えたかった。支援する側から被災者になって

笹本社長は9年前、東京から奥様のご実家がある七尾市へ移住されました。東京時代には、東日本大震災の復興支援事業に関わっていたというご経験をお持ちです。

202411日。笹本さんは、ご実家のある千葉県へ家族で帰省中に、あの大地震に見舞われました。

「七尾の状況が全く分からなくて。家族を千葉に残し、私だけ13日に車で七尾に戻りました。そして4日には、市場の通常業務と同じ流れで仕事を再開したんです」

あまりの早さに驚く私たちに、笹本さんはその理由を話してくださいました。

「東日本の復興支援をしていた時、『浜(港)の再開が遅いほど、復活が難しい』という現実を見てきました。能登の詳細な情報が首都圏に届かない中、とにかく七尾から魚を送ることで、『能登の水産業は死んでいない、動いているんだ』というメッセージを伝えたかった。それに、被害を受けていない漁師さんの魚を売ってあげなくては、という想いもありました」

ご自身の会社も、石崎町の営業所が地震と津波で大規模半壊。生け簀のなまこや魚は流され、奥能登の仕入れ先や和倉温泉への販路も大きな打撃を受けました。ご自宅も大規模半壊し、金沢の親戚宅からの長い通勤生活、みなし仮設を経て、最近ようやくご自宅を再建されたばかりだそうです。

最も大変だったのは、やはり「水」。約3ヶ月の断水中も、魚の扱いに必要な綺麗な水を求め、大きなタンクを積んで走り回り、仕事を止めることはありませんでした。

被災した石崎町の石崎営業所と石崎漁港の様子

 

地震後、地盤沈下による高潮被害の様子

(写真提供:すぎ省水産株式会社) 

10年で必ず復興できる」東日本の仲間から届いた、心強いエール

そんな苦しい状況の中、笹本さんの心を支えたのは、全国の取引先からの励ましと、そしてあの時のご縁でした。

「宮城県で復興を支援していた漁師さんや関係者から、『大丈夫か』って、逆に心配の連絡をもらったんです。『支援していた側が、被災者になっちゃいましたよ』なんて話して」

その時、宮城の仲間たちがかけてくれた言葉が、笹本さんの胸に深く刻まれています。

10年ぐらい経てば、必ず復興できるから」

「復興の様子を実際に見てきたからこそ、その言葉には重みがありました。自分たちも何とかやっていける、必ず復興できるんだと、自信を持って前に進む勇気をもらいました」 

課題を越えて、未来へ。「水産業の地位を向上させたい」

現在、会社は78割ほどの稼働に戻りつつありますが、被害を受けた工場の再建は、港の護岸復旧が進まないと計画も立てられない状況です。

さらに、震災前からあった「魚の減少」や「担い手不足」という水産業全体の課題が、今回の地震でより深刻になっています。特に、すぎ省水産の仕入れを支える奥能登の漁師さんたちの復興の遅れは、一番の懸念材料だと話されます。

「一度『浜』を離れてしまうと、人が戻ってこなくなり、過疎化が進んでしまう。その悪循環を東日本で見てきました。だからこそ、漁師さんが自信を持って漁業と生活を再開できるよう、一刻も早い復興を願っています」

それでも、笹本さんの視線は未来を向いています。

「大変な今だからこそ、ただ元に戻す『復旧』ではなく、変えるべきは変えて、震災前より良くする『復興』を目指したいんです」

その根底には、移住者としてこの能登に根を下ろし、水産業を愛する笹本さんの熱い想いがあります。

「水産業って、人気がない職業だと思われがちですが、本当はすごく重要で、面白い仕事なんです。漁師さんを基本に、仲卸、加工、運送、市場、魚を入れる発泡スチロール、そして飲食店・宿泊施設と、裾野がとても広い。この水産業が元気にならなければ、地域の復活はない。だからこそ、水産業の社会的地位を向上させたいんです」 

能登の「本物の味」を未来へ。感謝と決意の「ふぐの恩返し」

笹本社長に、「能登の魚の美味しさをどのように未来へ繋いでいきたいですか」と投げかけてみました。

「私たちは、能登の水産物を扱うことに関して、鮮度の良い物、品質の良い物にとことんこだわっています。うちの商品を扱ってくださる飲食店様の中には、ミシュランの星を持つ料理人の方々も多くいらっしゃいます。そのプロの方々が認めてくれるほどの品質が、能登の海にはあるんです」

その本物の味を、もっと多くの人に知ってほしい。それが未来へ繋がると信じています。

そして、全国の皆様へ、こうメッセージを送られました。

「そういった本物の能登の味を食べていただくことで、能登の水産物の価値をもっと知ってほしい。そして、能登の復興には時間がかかります。だからどうか、能登のことを忘れず、細く長く心を寄せて応援していただけたら嬉しいです。観光が復活して、皆さんが能登に来てくれることや能登の魚を食べることが、私たちにとって一番の力になります」

「私たちは、必ず復活・復興します。だから、長い目で能登を見ていてください」

その決意と感謝のしるしとして、すぎ省水産は新しい商品を開発しました。

その名も、「ふぐの恩返し」。

能登ふぐを贅沢に使った「花削り(削りぶし)」です。

「全国からいただいた温かいご支援に、能登から『ありがとう』と感謝を伝えたい。そして、『すぎ省は必ず復活しますよ』という姿を見せることが、応援してくださった方々への一番の恩返しになる。そんな想いを込めて、この名前を付けました」

この自社ブランドである「ふぐの恩返し」シリーズを増やしていくことが、これからの目標の一つ。また、イベントで販売すればすぐに売り切れてしまうという「能登ふぐの唐揚げ」も、ぜひ一度味わっていただきたい逸品です。

能登の海と、そこで生きる人々への深い愛。すぎ省水産の挑戦は、能登の水産業の未来を照らす、力強い光だと感じました。 

 企業詳細

すぎ省水産株式会社

代表取締役社長 笹本 和茂

住所:石川県七尾市大田町111番地17-1

TEL0767-53-0055

FAX0767-52-7226

HP https://www.sugisyo.co.jp

 


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