
七尾市の能登島に位置し、360度に広がる開放的な景観で多くのゴルファーを魅了してきた能登島ゴルフ&カントリークラブ。里山と海に囲まれたロケーションはこの地でしか味わえない魅力ですが、2024年1月の能登半島地震では、コースの一部が大きく崩れ、営業継続すら危ぶまれる事態に見舞われました。支配人の松本さんに、震災当日の様子から復旧への道のり、そしてこれからの思いを伺いました。
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突然の大きな揺れ、そして始まった住民の救助
地震発生時、松本さんは自宅で家族と過ごしていました。最初の揺れは「またか」という程度でしたが、続いて襲った大きな揺れは、逃げることもできないほど強烈なものでした。揺れが収まるとすぐに外へ出た松本さんは、津波の危険が叫ばれる中、高台へと向かいました。幸い防波堤のおかげで、津波の被害は免れたそうです。
その後、松本さんたちは倒壊した家屋に取り残された住民の救助にあたりました。消防や警察への連絡がほとんど繋がらない状況の中、住民たち自身がチェーンソーを手に、瓦礫をかき分けながら救出作業を行い、8人全員を無事に助け出すことができたそうです。その夜は高台で野宿となり、40〜50人が肩を寄せ合いながら夜を明かしました。
ゴルフ場に駆けつけたのは1月3日
松本さんがゴルフ場の様子を確認できたのは、地震発生から3日目のことでした。道路の各所が寸断され、亀裂の入った道を車で慎重に進みました。到着したゴルフ場では、給湯設備が破損し、外壁が剥がれて雨漏りが発生し、天井の一部が崩落するなどの被害が確認されました。それでも建物自体の傾きは軽微で、「生き残った」と表現できる状態だったそうです。



一方で、コース内は各所で地面が割れ、通路にはひび割れや陥没が生じていました。特に2番ホールの被害が大きく、コースや通路の一部がごっそり崩れ落ちてしまっていました。※写真は能登島G&CC様よりご提供頂きました。

従業員の安否確認にも時間がかかり、全員の無事が確認できたのは地震から1週間ほど経ってからのことでした。自宅が全壊し、金沢など別の場所へ移らざるを得ないため退職を選んだスタッフもいました。
「やるしかない」―スタッフ総出でのコース復旧
ゴルフ場の収入源はゴルフ場そのものの営業のみ。松本さんは、営業を再開できなければ従業員の給与すら支払えなくなるという危機感から、一日も早い再開を目指しました。業者に依頼しても対応してもらえない状況の中、スタッフ総出で一輪車を使い、砕石を運んでコースやカート道路の穴や亀裂を埋めていったといいます。幸いにもその年は積雪が少なく、作業を進めやすい環境だったことも復旧を後押ししました。
約3カ月にわたる懸命な作業の末、2024年3月末にはゴルフのプレーだけは出来るという形で営業を再開。レストランや入浴施設はまだ利用できない状態でしたが、地元の人たちからは大きな喜びの声が寄せられたそうです。震災当時、能登地区にある4つのゴルフ場の中で、最も早い営業再開でした。※再開後の2番ホールの様子



「周りの状況を見て、自粛すべきではないか」という声もありましたが、実際に輪島の朝市の火災でクラブを失った方から、「いい気晴らしになった。ありがとう」と声をかけられ、再開して本当に良かったと実感したといいます。震災を経て、改めてゴルフというスポーツの存在意義を感じた出来事でもありました。
少しずつ取り戻した日常、そして半年越しの通常営業
水道の復旧にも時間を要しました。井戸水の整備によりトイレは3月頃から使用可能になったものの、飲用水としては使えず、レストランの再開は県水が届いた4月まで待つ必要がありました。入浴施設についても、破損した給湯設備の修理には多くの費用と時間がかかることが判明したため、思い切ってガス給湯設備へと一新。最終的に通常営業を再開できたのは、地震から半年が経過した6月中旬のことでした。
再開直後は、地元客は戻ってきたものの、金沢や富山の利用客からは能登への訪問を遠慮する声が多く聞かれて、なかなか集客には結びつかなかったといいます。転機となったのは2024年の秋以降、東京や大阪など遠方から「復興の力になりたい」と訪れる団体客が増えたことです。また、ゴルフのレッスンプロたちがSNSで「能登島ゴルフは営業中だよ」と発信してくれたことも、大きな追い風となりました。
現在、能登島ゴルフは震災前と比較して、客足の約9割程度まで回復しています。しかし、その内訳は以前とは大きく変わりました。震災前、宿泊客の多くを占めていた和倉温泉が大きな打撃を受け、受け入れ人数が激減したことで、宿泊需要が消滅してしまったのです。
この穴を埋めるため松本さんたちはサービスの向上に努めているそうです。
「とにかくコースをきれいにして、食事も美味しいものを提供して、従業員の接客の質も高めていく」
そういうところで、よりお客様に喜んでもらえるように、出来ることをがんばるしかないと前向きに取り組んでいます。

コースに込められた思い、そして地域の集いの場として
能登島ゴルフ&カントリークラブの魅力について尋ねると、松本さんは「作ろうと思っても作れない、このロケーション」と語ります。360度見渡せる開放的なコースは全国的にも珍しく、クラブハウスからコース全体を見渡せる設計も特徴のひとつです。4番ホールと5番ホールは、実は能登島大橋と能登島の形をモチーフにデザインされているそうで、「そこはぜひ見て欲しい」と松本さんは笑います。
現在、能登島ゴルフ&カントリークラブでは、地元の小学校の課外学習の場としてコースを提供するほか、和倉温泉で大規模な宴席が組みにくくなったことを受け、地域住民の食事会や集いの場としても活用してもらうため、レストランで柔軟な対応をされています。ランチはどなたでもご利用いただけますし、団体様の宴会の予約も受け付けています。


実際、ゴルフのパーティーなら200名、通常の宴会でも100名は入れる広さがあります。メニューについても、お客様の要望をきいて、できるだけ応えるようにしているそうです。松本さんは、社訓にあるとおり、地域の方々の教育や活動の場、集いの場として提供していきたいと、今後の展望を語ってくれました。

お客様の声を形にする、現場主義の経営
能登島ゴルフ&カントリークラブでは、社長自らが週に一度程度コースに足を運び、プレーを通じて現場の状況を確かめているそうです。「ふらっと見に来るだけでは気づけないことも、実際にプレーしてもらうと分かることがあるんです」と松本さん。お風呂の温度や食事の内容など、プレーヤー目線でしか気づけない指摘が寄せられることもあり、それが日々のサービス向上につながっているといいます。「お客様の声を形にしていきたいので、気づいたことがあれば言っていただける方がありがたい」と松本さんは笑顔で語ってくれました。
地域と共に描くこれからの姿
今後の展望について尋ねると、松本さんはサッカーボールを使ってカップインを競うフットゴルフのような、誰でも気軽に参加できる企画を能登島ゴルフ&カントリークラブでも実施してみたいと語ってくれました。売上を目的とするのではなく、まずはこの場所を知ってもらうきっかけにしたいという思いからだそうです。また、水族館や美術館など能登島内の他の観光施設と連携し、家族それぞれが一日を通じて能登島を楽しめるような周遊プランを描けないかという構想も、以前から地域の中で話題に上がっているといいます。実現には至っていないものの、関係者との連携次第では今後形になる可能性もありそうです。
震災から2年半が経過してもなお、以前の姿を完全に取り戻したわけではありません。それでも、スタッフ一人ひとりの「やるしかない」という思いと、地域とともに歩む姿勢が、能登島ゴルフ&カントリークラブの復興を支えてきました。
インタビューの最後、松本さんは全国のゴルフファンや観光客に対し、こう語りかけました。
「能登へ行くことを迷っている人がいたら、ぜひ遠慮せずに来てほしい。被災地を訪れることに躊躇する方もいるかもしれませんが、皆さんが足を運んでくれることこそが、私たちが前を向くための最大のエネルギーになります」

能登島ゴルフ&カントリークラブのコースから見える景色は、今も変わらず美しいままです。能登の海を見渡す広大なロケーションの中で、スタッフたちの情熱と笑顔が、訪れる人々を温かく出迎えてくれます。能登島に吹く新しい風を、ぜひ皆さんも感じに来てください。
能登島ゴルフ&カントリークラブ 施設詳細
所在地 石川県七尾市能登島半浦町7号1番地
開場年月日 1989年11月6日
コース設計 小林 光昭
コース情報 18ホール、パー72、全長7,007ヤード
電話番号 0767-85-2311
FAX番号 0767-85-2318
営業時間 8:00~17:00
定休日 不定休
駐車場 123台
公式HP https://www.notojima-golf.jp/

















