支援拠点から能登の未来を育む場所へ「柳田植物公園」の挑戦|能登町

能登半島地震から2年以上が経った今も、能登では復旧と復興の日々が続いています。そんな中、石川県能登町にある柳田植物公園では、支援を受ける場所から、未来を生み出す場へと変わろうとする動きが生まれていました。

公園を管理・運営する合同会社能登みらい創造ネットワーク代表の竹内剛さんは、震災直後から支援の最前線に立ちながら、全国から集まる人たちとの縁を未来へとつなげています。

「能登だからできることがある」

その言葉の先に見えてきたのは、単なる復旧ではなく、この土地の豊かさを生かした新しい地域の形でした。 

能登半島地震――公園が支援拠点になった日

202411日。能登半島を大きな地震が襲いました。

元日のため休園していた柳田植物公園には宿泊客もおらず、スタッフもそれぞれ自宅で過ごしていました。施設は各所で被害を受けたものの、大きな倒壊は免れます。

揺れが収まるとすぐに、竹内さんは植物公園の目の前にある自宅を飛び出し、公園の状況確認へ向かいました。しかしその最中、再び大きな揺れが発生。目の前で自宅が激しく揺れる様子を、ただ見つめることしかできなかったといいます。

震災翌日から、公園の景色は一変しました。

全国から集まった緊急消防援助隊の車両が、公園の駐車場を埋め尽くしたのです。

200台近い緊急車両が並んでいました。今まで見たことのない光景でしたね」

奥能登の捜索活動拠点となった公園では、隊員たちがテント生活を送りながら救助活動を続けていました。幸い、公園では電気が使用できたため、公園敷地内にあるレストランを消防隊本部として提供。さらに、コテージは支援団体や避難者へ開放されました。

水道の仮復旧は5月直前までかかりましたが、その間も公園スタッフは柳田小学校の給食室を借りて弁当を作り、避難所へ届け続けたそうです。

支援を受けながらも、自分たちにできる役割を探し続ける日々でした。

全国から届いた応援の力が、未来を動かし始めた

震災後、公園には全国からさまざまな支援の声が届きました。

その中でも印象的だったのが、福井の銀行からの申し出です。

「必要なものを言ってください。スポンサーもこちらで探しますから」

その言葉を受け、導入が進められたのがホテル仕様のトレーラーハウスでした。

「観光拠点としてたくさんの人に利用していただきたい」。そんな想いが込められています。

さらに現在、公園ではきのこをイメージしたテントハウスの整備も進行中です。

「白いテントだと、どうしても震災を思い出してしまう。もっと楽しい雰囲気にしたかったんです」

その言葉に応えたのは、名古屋工業大学発のメーカーでした。基礎工事まで含めて支援が行われ、バイオトイレも備えた新しい滞在空間が整えられています。

支援はモノだけではありません。

アーティストが集まるクリエィティブユニットPALは、明日という名の種をまこうという楽曲を制作し、募金活動とともに花の種を届ける支援を続けてきました。

「学校へ配るだけじゃもったいない。一緒にここでまきましょう」

竹内さんのその一言から、公園での種まきイベントが実現します。

昨年のござれ祭りでは、その楽曲に合わせて花火が打ち上げられ、渡辺真知子さんも来場。震災後の能登に、少しずつ笑顔が戻っていったそうです。

「顔が広いですね」と声をかけると、竹内さんは「いや、本当に縁なんですよ」と。

でもきっと、そのを自然と引き寄せるのは、目の前の人や地域を大切にする竹内さんの人柄なのだろうと感じました。

 

防災と暮らしをつなぐ「オフグリッド構想」

竹内さんは、震災前から温めてきた構想があります。

それが、オフグリッドの考え方です。

電気・水・食をできる限り地域内で循環させ、災害時でも機能する小さなコミュニティを作ること。現在、公園では井戸やバイオトイレの整備が進み、将来的には発電設備なども視野に入れているそうです。

「大きなものじゃなくていいんです。小さくても、ちゃんと回ることが大事なんですよね」

その考えは、震災によってさらに現実味を帯びました。

そして、このオフグリッド構想は、将来的な防災道の駅構想へとつながっています。

緊急車両を受け入れられる広い敷地。
飲料水の確保。
電力の自立。
宿泊機能。

今回の震災で実際に支援拠点となった経験があるからこそ、災害時に本当に機能する場所を目指しているのです。

観光施設でありながら、地域を守る場所にもなる。

柳田植物公園は今、そんな新しい役割を担おうとしていました。 

星空と静けさの中で、生まれ始めている地域の未来

もうひとつ、竹内さんが大切にしているのが、この土地が持つ静けさです。

柳田地区は、日本でも特に夜空が暗く、星が美しく見える場所として知られています。園内には石川県柳田星の観察館満天星もあり、この環境を今後の観光資源として生かしていきたいと考えているそうです。

近年、世界では静けさ暗闇そのものに価値を感じる旅のスタイルも注目され始めています。喧騒から離れ、自然の中でゆっくり過ごす時間。柳田植物公園には、そんな過ごし方ができる環境があります。

「豪華なものを作りたいわけじゃないんです。安心して過ごせて、気持ちよく眠れて、また来たいと思ってもらえる場所になればいい」

その言葉どおり、公園にはどこか肩の力が抜けるような空気が流れていました。

さらに最近では、公園で行われるイベントや交流の様子を見て、「自分たちも何かやってみたい」と地域の人たちが動き始めているそうです。

地元住民によるイベント企画や、若い世代によるフェスの構想など、公園をきっかけに新しいつながりが少しずつ生まれています。

金沢工業大学の片桐先生のつながりから生まれた地域住民グループ柳田盛り上げたいでは、手づくり運動会を企画中。地域の人たちが中心となって、「みんなで集まれる機会を作りたい」と準備を進めています。

また、珠洲市の飯田高校の学生たちも、公園を活用したフェスを計画しているそうです。震災を経験した若い世代が、「自分たちで地域を盛り上げたい」と動き始めていることに、竹内さんも大きな期待を寄せていました。

「私が何かをお願いしているわけではないんですけど、自然と広がってきているんですよね」

そう話す竹内さんの表情からは、人が集まり、地域が少しずつ前を向き始めていることへの喜びが伝わってきました。

取材を終え、公園を歩いていると、風に揺れる木々の音だけが静かに響いていました。

夜になれば、ここには満天の星空が広がります。

便利さや速さだけでは測れない豊かさ。
人との距離が近く、自然とともに過ごす時間。

震災を経験したからこそ、この場所が持つ価値を、地域の人たち自身が改めて感じ始めているのかもしれません。

柳田植物公園は今、復興という言葉だけでは語れない未来が育ち始めているのだと感じました。

施設情報

柳田植物公園
所在地:石川県鳳珠郡能登町字上町ロ部1-1
TEL
0768-76-1680

合同会社能登みらい創造ネットワーク
所在地:石川県鳳珠郡能登町字上町イ46-9


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