「高沢ガラス建材店」震災を越えて。能登の暮らしに寄り添い続ける50年の歩み|七尾市

石川県七尾市で50年以上、地域の暮らしを支え続けてきた高沢ガラス建材店2024年元日の能登半島地震では、大切に保管していた在庫のガラスがすべて粉々になりました。それでも、代表の櫻井さんは立ち止まりませんでした。困っているお客さんがいる——まず動くことが先決でした。震災から2年以上が経った今、仕事への想いと地域への気持ちを、奥様とともに聞かせていただきました。 

創業50年。「高沢」の名前と、先代への敬意

高沢ガラス建材店という社名は、先代——現代表・櫻井さんの義父——の名前に由来しています。先代が長年勤めたガラス屋から独立し、七尾の地に店を構えたのが今から約50年前のことです。

「私の名字は櫻井ですが、昔からのお客さんも多いので、名前は変えずにそのままやっています」と櫻井さんは話します。先代が地域に築いてきた信頼をそのまま受け継いでいきたい——その静かな決意が、一言に込められていました。

代表になったのは5年前ですが、それ以前から20年以上、先代と肩を並べて現場を歩いてきました。 

外壁を触らずに、高沢だけで完結できる

主な事業は、工務店や大工への建材サッシの卸しです。それに加え、一般家庭向けのカーポート、風除室、門扉、フェンスといったアルミ製品全般を取り扱っています。いわば家の外周りのプロです。

最近、お客さんからの依頼で特に多いのが内窓の設置です。既存の窓の内側にもう一枚窓を取り付けることで、断熱性や防音性が大幅に上がります。国の補助金制度の後押しもあり、ここ数年で急速に広まりました。そして内窓の次に増えてきているのが、玄関ドアの交換です。

玄関ドアの交換にはカバー工法を採用しています。既存の枠をそのまま活かし、その上から新しいドアを被せるように設置するため、外壁を一切傷つけずに工事が完結します。「外壁を触らなくていいので、左官屋さんや別の業者を呼ぶ必要がありません。高沢ガラス建材だけで全部完結できるのが強みです」と櫻井さんは話します。複数の業者を手配する手間が省けるだけでなく、工期も短く、お客さんへの負担も少なくて済みます。

仕事の範囲は七尾市内にとどまりません。大手メーカーの下請けとして入ることで、能登全般にわたる現場にも対応しています。地元密着でありながら、広い地域を支える存在でもあります。

仕事への姿勢で大切にしているのが「ミスなくやること」です。「どうすればお客さんに喜んでもらえるか、ただそれだけです」と話す言葉の裏に、50年ぶんの誠実さが滲んでいました。ガラスが割れた時や戸の調子が悪い時にすぐ駆けつける、そのフットワークの軽さもまた、地域に長年愛されてきた理由のひとつです。 

元日の震災。病室で受け取った知らせ

202411日、午後410分。能登半島を最大震度7の揺れが襲ったとき、櫻井さんは年末年始を利用し体調をととのえるため入院中でした。家族は自宅にいました。

「建物自体は鉄骨だったので大きな被害はありませんでしたが、中に置いてあった在庫のガラス棚がごっそり倒れてしまいまして。ガラスは全部粉々。商品としては全滅でした」と、静かに振り返る言葉の奥に、その光景の重さが伝わってきます。昔から大切に保管してきた、今はもう製造されていない珍しい模様のガラスも、ひとつ残らず砕けてしまいました。

(写真提供:高沢ガラス建材店様)

自宅でも被害は大きく、奥様は「冷蔵庫やタンスは倒れなかったのですが、食器棚の中身は全部割れて。屋根の棟がズレ雨漏りもしました」と当時を振り返ります。

割れたガラスを処分するだけでも、骨の折れる作業でした。震災ゴミの集積所が近くに設けられ、何度も軽トラックに積んで運びました。断水が続く中、心強かったのは会社の井戸水でした。毎日ペットボトルに汲んで自宅へ帰り、体を拭いたり頭を洗ったりして過ごしました。「このあたりは水が湧くところが多いので、井戸がある家は強かった」と話す通り、近所の人たちも同じように井戸水を分け合い、日々をしのいでいたそうです。 

半年間、震災対応に明け暮れた日々

1月中旬から、少しずつ仕事を再開しました。お客さんから寄せられた相談は、「戸が開かなくなった」「鍵が閉まらない」「ガラスが割れた」といったものが大半を占めました。奥様も「ガラスの割れ替えの作業だけでも、かなり多かったんです」と話すほど、問い合わせは絶えませんでした。

以来、半年ほどは震災対応に明け暮れました。そのなかで特に苦労したのが、補助金の申請手続きでした。罹災証明の取得、作業前後の写真の準備——慣れない書類仕事に、修理が終わってから写真を撮っていないことに気づくこともたびたびあったと苦笑いします。

商工会議所を通じた補助金を活用し、敷地の舗装工事も行いました。会社の前には国道が走っていますが、地震によって歩道が盛り上がったことで排水の流れが変わり、雨のたびに敷地が水浸しになってしまっていたそうです。補助金を使ってきれいに舗装し直すことで、その悩みもようやく解消されました。「本当に助かりました」と、静かな安堵の表情で話してくれました。

 

「仕事は面白い」。毎日が一期一会の現場

後継者はいません。それでも櫻井さんは焦りません。「私たちができる限り、無理せず細く長く続けていければ」——その言葉には、じっくりと地域に根を張ってきた人の落ち着きがありました。

「現場によって状況が全部違うので、同じ仕事が一つとしてないんですよ。だから面白い」。そう話す櫻井さんの顔には、仕事への飽くなき興味が滲んでいました。長年積み重ねてきた経験があるからこそ見える、現場ごとの違いと面白さ。その目線が、今もお客さんの暮らしをきめ細かく支えています。

ミスなくやること、丁寧であること、そしてすぐに行くこと。「仕事は生きることそのもの」だという櫻井さんにとって、毎日の現場は今日も真剣勝負です。「毎日が真剣勝負ですが、これからも丁寧な仕事を積み重ねていきたいです。体が動くうちは、困っているお客さんの力になりたいと思っています」——その言葉が、取材を終えた後もずっと胸に残りました。

 震災で在庫をすべて失っても、櫻井さんの話しぶりに悲壮感はありませんでした。「面白い仕事だから」と笑う顔が印象的でした。その明るさこそが、地域とともに50年を歩んできた力の源なのかもしれません。

最後に読んでくださる方へメッセージをいただきました。

能登はいま、少しずつ活気を取り戻しています。青柏祭をはじめ、祭りの季節にはぜひ能登に足を運んでみてください。「少しでもお金を落としていってくれたら、それが一番の応援になる」——そう話してくれた櫻井さんの笑顔が、忘れられません。 

企業詳細

高沢ガラス建材店

住所 石川県七尾市万行3丁目1

TEL 0767-52-2507

事業内容 サッシ卸・内窓設置・玄関ドアカバー工法・アルミエクステリア全般(カーポート・風除室・門扉・フェンスなど)

 


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