「難しいからこそ、また来たくなる」名門・能登CC支配人が語る震災と復興|宝達志水町

石川県羽咋郡宝達志水町。能登半島の付け根、東に能登最高峰・宝達山を望み、西には日本海が広がるこの地に、能登カントリークラブはあります。開場は1968年(昭和43年)10月。半世紀以上の歴史を刻み、かつては「ダンロップトーナメント」「三菱ギャラントーナメント」といった名だたる大会の舞台となり、日本ゴルフ界を代表するプロたちがこのフェアウェイを歩きました。2023年には北陸で初めてとなる「日本シニアオープンゴルフ選手権」を開催し、2025年には新規大会「リシャール・ミル チャリティトーナメント」の記念すべき第1回の舞台にも選ばれ、開催を成功させています。石川県内でも屈指の名門コースとして知られる同クラブは、令和6年能登半島地震という大きな試練を経てもなお、能登の復興を静かに、しかし力強く支え続けてきたのです。今回は、支配人の加藤雄一さんに、地震発生時の状況、そして復興への歩みについてお話を伺いました。

ゴルフとの出会いと支配人としての歩み

加藤さんがこの能登カントリークラブに来られたのは78年前のこと。当時はまだ支配人ではなく、その後副支配人を経て、支配人に就任されたのは昨年8月だといいます。出身はお隣の富山県で、もともとはゴルフとは無縁の仕事に就いていましたが、営業の取引先だったゴルフ場の支配人から「働いてみないか」と声をかけられたことがきっかけで、この世界に入ったそうです。「それまではゴルフもやったことがなかった」と振り返るように、ゴルフとの出会いはこの仕事から始まっています。

名門と呼ばれるクラブを任されるプレッシャーについて尋ねると、「特別なプレッシャーというより、メンバーの皆さんの期待値が高い分、求められるものも自然と高くなると感じてはいます」と穏やかに語ります。就任から一年、「大変なことの方が多かった」としながらも、その言葉には、名門の看板を守り続ける覚悟がにじんでいました。

元日の地震、それでも守られたコース

2024年11日、能登カントリークラブは通常通り定休日でした。地震が発生した午後4時過ぎ、施設内には電話当番のスタッフが1人いただけで、支配人自身はその場にいませんでしたが、後に聞いた話では、建物内は物が散乱するほどの揺れだったといいます。配管が損傷し、あちこちで水漏れが発生。コース内の散水設備の一部も破損しましたが、幸いにもコースそのものに地割れや崩落といった被害はなく、売店がわずかに隆起した程度で済みました。「コースだけなら、翌日にでもプレーできる状態だった」と支配人は話します。

※写真は能登カントリークラブ様よりご提供頂きました。

館内は配管の被害で入浴施設などが一時使用できなくなったものの、応急修理を経て23週間後には営業できる状態に。ただし、周囲の状況を見ながら再開のタイミングを慎重に見極めたといいます。

そして、思いがけない形で地域に貢献できたのが「水」でした。同クラブは水道水ではなく井戸水を使用しており、停電もなかったためポンプが動き、地震直後も水を使うことができたのです。周辺で断水が相次ぐ中、給水やトイレの提供を通じて、困っていた地域の方々を支えることとなりました。ゴルフ場という場所が、思わぬ形で地域のライフラインの一部を担った瞬間でした。

少しずつ戻ってきた笑顔

震災直後は来場が落ち込んだものの、影響は一時的なものにとどまり、同年56月にはコンペも次々と再開されました。「コロナ禍の方がむしろ客足への影響は大きかった」というほど、地震後の落ち込みは限定的だったそうです。それでも、能登に実家があるメンバーの中には、当面ゴルフどころではないという方も少なくなかったといいます。そうした方々が「久しぶりに来たわ」と姿を見せてくれるようになるまでには、1年、1年半という時間が必要でした。それでも一人また一人と戻ってきてくれる姿に、支配人は「やっぱり嬉しかった」と言葉に力を込めます。

県外からの問い合わせも相次ぎました。「ゴルフ場まで行けるのか」「本当に大丈夫なのか」――心配した顧客からの電話や、応援の気持ちを込めた寄付も寄せられたといいます。クラブとして受け取った支援の一部は、能登の被災地へも届けたそうで、日頃の付き合いの中で育まれた縁が、震災という非常時に形を変えて返ってきたのです。

その他、能登カントリークラブのオーナーも中日新聞社を通じて被災地へ寄付するなど、少しでも復興の手助けになればと思い活動していたそうです。

チャリティトーナメントが灯した「風化させない」という思い

2025年、能登カントリークラブは新規大会「リシャール・ミル チャリティトーナメント」の第1回開催地となりました。スイスの時計ブランドが主催し、日本ゴルフツアー機構と共同開催するこの大会は、能登半島地震・豪雨からの復興支援を大きな目的の一つに掲げ、賞金の一部が被災地支援に充てられる仕組みです。会場のギャラリープラザには輪島朝市組合なども参加し、地元の名産品や食材が並びました。入場料が無料だったこともあり、「初めて来た」という来場者も多く、支配人は「復興の賑わい創出に、少しはお手伝いできたのではないか」と振り返ります。

「能登の現状は、まだまだ良くなっていない部分もたくさんある。それでも、どんなことであれ風化させず話題にしていくことが大事」――支配人はそう静かに語ります。ゴルフという競技を通じて能登に人が集まり、能登の名前が全国のニュースやテレビに流れ続けること。それ自体が、被災地にとって大きな意味を持つのだと実感しているといいます。

「攻略できない」コースが名門である理由

能登カントリークラブが名門と呼ばれる理由を尋ねると、支配人は「開場から50年以上の歴史があり、トーナメントを開催してきたコースならではの難しさがある」と語ります。何より特徴的なのが、グリーンの難しさです。傾斜がきつく、ピンの位置によって攻略のしやすさが大きく変わるため、初めて訪れる県外の客からは「グリーンが難しい」という声がよく聞かれるそうです。「なかなか攻略できないところが、能登カントリーの面白さであり魅力」だと支配人は笑います。長年にわたり通い続ける会員が多いのも、この簡単には攻略させてくれないコースならではの奥深さがあるからかもしれません。また、支配人のおすすめポイントは日本海コースの朝一番のティーショット。海に向かって打つその瞬間は、訪れる誰もが口を揃えて「気持ちいい」と言うそうです。

※写真は能登カントリークラブ様よりご提供頂きました。

能登の玄関口として、これからも

能登カントリークラブは、能登半島の入り口に位置しています。「せっかくここまで来ていただいたのなら、ぜひ能登の方も回っていただきたい。徐々に復興も進んでいるので、訪れて楽しんでいってもらえたら」と支配人は語ります。ゴルフ場としては、来場した誰もが「楽しかった」と満足して帰れる場所であり続けることを目指しながら、海と山が近くて魅力的な能登の自然の豊かさも合わせて伝えていきたいといいます。

最後に、能登に思いを寄せる全国の方々へメッセージを尋ねると、支配人はこう答えてくれました。

「地震直後は全国からたくさんのご心配やご支援をいただき、この地域で働く人間として本当に励みになりました。能登も徐々に復興していますので、能登カントリークラブも含めて、また遊びに来ていただけたら嬉しいです」

和倉温泉なども少しずつ営業を再開しており、能登の復興は着実に前へと進んでいます。難関コースとして名を馳せてきたこの名門ゴルフ場は、これからも変わらずそこに在り続け、全国のゴルファーを温かく迎え入れていくことでしょう。

能登カントリークラブ 施設詳細

住所:石川県羽咋郡宝達志水町米出ワ1
ご予約・お問い合わせ:TEL.0767-28-3155 FAX.0767-28-5141 MAIL . info@notocc.com

経営会社:能登興業開発株式会社


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