データで示す能登の底力!興能信金田代理事長が語る希望と全国の絆|能登町

令和6年の能登半島地震、そしてその後に重なった豪雨災害を乗り越え、能登は、いま一歩ずつ、力強く復興の道を歩んでいます。今回は、地域に深く根ざし、私たちの暮らしと経済をすぐ側で支え続けてくださっている興能信用金庫の田代理事長にお話を伺いました。

田代理事長は、非常に論理的に、たくさんの貴重なデータを交えながら、これからの能登の未来に繋がる希望のメッセージを温かく語ってくださいました。

「自利とは利他を言う」――信用金庫の原点と田代理事長の歩み

田代理事長は、地元の高校を卒業後、活気にあふれた出店ラッシュの時代に興能信用金庫に入庫されました。当初は金融の道に進むという想像すらしていなかったそうですが、日々の仕事のなかで自分が成長し、お客様に頼っていただける喜びを知り、学びの面白さに目覚めたといいます。さまざまな地域での勤務を経て、47歳の時に本店営業部長として能登の地へ戻り、6年前に理事長に就任されました。

そんな田代理事長が、経営のポリシーとして最も大切にされているのが「自利とは利他を言う」という言葉です。

「自分の利益とは、すなわち他人の利益。あなたの利益を作ることが、私たちの利益になる。これこそが、信用金庫の根幹にある相互扶助の精神であり、お客様第一主義の本質です」と、田代理事長は優しく微笑みます。地域のため、お客様のため、そして共に働く役職員のために尽くすこと。それが結果として信用金庫の成長となり、自分自身の喜びへと繋がっていくのだという温かい信念が、すべてのお話のベースにありました。

震災直後の緊迫と、地域密着だからこそできた「お顔と声」への対応

令和6年1月1日、田代理事長は内灘のご自宅で激しい揺れに襲われました。「頭の中が真っ白になった」というほどの大きな衝撃のなか、100キロ離れた能登の本店の状況が見えない不安を抱えながらも、すぐに職員の安否確認と災害対策に奔走することになります。発災当日の夜11時には、金沢支店での災害対策本部の設置を決定し、交通網や通信網が遮断される半島特有の困難のなか、5日の正午までに全職員252名の無事を確認されました。しかし、なかには最愛のご家族を亡くされた職員もおり、決して手放しでは喜べない、胸が締め付けられるような状況からのスタートだったそうです。

そんな過酷な状況下で、興能信用金庫が長年培ってきた地域密着の強みが大きな光を放ちました。

お客様の中には、被災されて、火災や津波、建物の倒壊によって、通帳や印鑑、身分証明書までも失った方も多くいらっしゃいました。しかし、店舗に足を運ばれたお客様に対し、職員のみなさんはお顔と声で本人だと判断し、非常時対応の手続きを進められたのです。「信用金庫はお客様のお顔がよく見えています。お互いの顔を見て、声を聞くことで『無事でよかった』と確認し合いながら、印鑑がなくても、通帳がなくても、安心してお金をお渡しすることができました」とお話しくださいました。普段から地域の一人ひとりと深い信頼関係を築いてこられたことがわかるエピソードです。

全国254の仲間から届いた、本物の「絆」の力

また、田代理事長が深く感動されたのが、全国の信用金庫の仲間たちとの繋がりでした。発災直後から「大丈夫か、応援するぞ」という温かい声が次々と届いたそうです。当時、能登では深刻なガソリン不足が発生し、職員のみなさんが通勤すらできない危機に陥っていました。その際、全国の信金から「何でも言ってくれ」と電話があり、田代理事長が「ガソリンの携行缶がほしい」と伝えたところ、なんと翌々日には金沢支店に大量の携行缶が届いたのです。水や生理用品などの支援物資とともにトラックで能登へ運ばれてきたその携行缶のおかげで、職員のみなさんは通勤し、営業を継続することができました。

さらに、全国254の信用金庫の役職員のみなさんやお客様からの温かい善意が集まり、能登の6市町に対して、それぞれ1億円ずつ、総額約6億円もの寄付を行うことができたそうです。「普段からの交流はもちろんありますが、本当にピンチになった時にこれほどの力を発揮できるのが、私たちの本物の『絆』であり、業界としての相互扶助の強みです」と、誇らしげに、そして深い感謝を込めて語ってくださいました。

データが証明する、能登の明るい未来と「外貨を稼ぐ力」

インタビューのなかで、田代理事長は私たちに大きな希望を与えてくれる確かなデータを紹介してくださいました。

田代理事長は、震災直後の1月中旬という早い段階で、過去の震災(東日本大震災の気仙沼市、宮古市、石巻市、南三陸町や、熊本地震など)の経済循環分析を調べられました。その結果、どの被災地でも発災から34年後に生産性のピークを迎えるという明確な事実を導き出されたのです。インフラ復旧に伴う二次産業(建設・土木など)の需要が急増し、それに伴って、宿泊施設や飲食店の整備が進むため、震災前よりも高い生産性が10年近く維持される傾向があるのだそうです。「このデータを見たとき、『大丈夫、能登はこれでいける、絶対に復興できる』と確信しました」と田代理事長は力強く語ります。

さらに、能登が持つ潜在的な強さとして、田代理事長が最も強調されたのが、能登の外貨を稼ぐ力(地域外からお金を呼び込む力)です。

多くの人が「石川県の観光や経済の中心は金沢や和倉温泉(七尾市)だ」と思いがちです。もちろんそれらの復興も最優先ですが、田代理事長が経済循環分析を行ったところ、能登地域(特に奥能登)は、実に全体の4ものお金を地域外から稼ぎ出しているという驚くべき結果が出ました。これは、金沢市(約13%)や七尾市(約25%)の水準を大きく上回る割合です。

その源泉となっているのが、世界農業遺産に認定された能登の里山里海の豊かな恵みそのものです。能登米、能登牛、天然の塩、寒ぶり、そして能登杜氏が醸す素晴らしい地酒など、能登には世界一、日本一を誇る魅力的な地域ブランドや、こだわりを持った事業者さんがたくさん存在しています。

「金沢や和倉があるから能登に来るのではない。能登にある唯一無二の魅力や文化を目的に全国から人々が訪れ、その過程で金沢や和倉に宿泊される方もたくさんいるのです。だからこそ、創造的復興の主役として、能登の事業者のみなさんにしっかりと目を向け、その魅力をさらに伸ばしていく必要があります」という田代理事長の言葉には、能登の未来への絶対的な確信と誇りが満ちあふれていました。

一人ひとりの所得を増やす「伴走者」として

人口減少や高齢化が進む能登において、震災はさらにそのスピードを加速させるトリガーになってしまいました。事実、震災を契機に廃業を選択せざるを得なかった事業者さんもいらっしゃいます。

しかし、田代理事長は「人口が減り、経済全体のトータルの生産額が減ることは避けられないかもしれません。しかし、本当に大切なのは地域で暮らす一人ひとりの所得が増えていくことです」と指摘されます。データを見ても、能登の人口が減少しているなかでも、事業者のみなさんの懸命な努力によって、一人当たりの所得や生産性は決して落ちておらず、むしろ維持・向上しているのです。魅力ある事業が地域にある限り、持続可能性は必ず担保されます。

だからこそ、これからの信用金庫の役割は、単にお金を融資する(金融面)だけでなく、売上の増加や利益率の改善、事業承継といった非金融面でのサポートを徹底的に強化することだといいます。

「売上を伸ばすことや、経営を改善することは、従来の金融の仕事ではないかもしれません。しかし、私たちには全国の信用金庫のネットワークや専門機関との繋がりがあります。これらをフルに活用して、事業者のみなさんのパートナーとなり、一緒に知恵を出し合って実践していく。もし、どうしても後継者が見つからない場合でも、ただ廃業するのではなく、その事業が持つ素晴らしい『価値』を評価し、次に譲る形(M&Aなど)を整えていく。人口減少を課題のスタートにするのではなく、事業の価値向上を課題の一歩に考えていくことが、私たちが最も大切にすべきことです」と力強く結ばれました。

溢れる「ありがとう」を希望に変えて

震災と豪雨という二重の苦難を経験した興能信用金庫の職員のみなさんについて、田代理事長は「本当にたくましく、そして優しく成長してくれました」と目を細めます。自らも仮設住宅から通勤し、家族を支えながらも、お客様の住宅ローンや事業相談に真摯に向き合う職員たちの姿に、心から頭が下がる思いだといいます。

最後に、全国のみなさんへのメッセージを伺うと、田代理事長は一言一言を噛み締めるようにこう語ってくださいました。

「今回の震災や豪雨を通じて、全国の本当に多くの方々から温かいご支援をいただきました。もしもこの繋がりがなかったら、今の興能信用金庫も、能登の復興もありませんでした。心から、ありがとうという言葉を申し上げたいです。気がつけば、私の人生のなかで、今が一番『ありがとう』という言葉を口にしている毎日です。この感謝の気持ちを胸に、私たちはこれからも能登の事業者のみなさんと寄り添い、共に歩み、素晴らしい能登の未来を創り上げていきます」

優しさと力強さ、そして確かなデータに裏付けられた田代理事長のお話は、私たち能登に生きる者にとって、最高の未来への希望の灯火だと感じました。

興能信用金庫 企業詳細

本店営業部・小木支店
住所 :鳳珠郡能登町字宇出津ム-45-1
電話 :0768-62-8200
窓口営業時間 :平日 9:00~15:00 お昼休憩 12:30~13:30
ATM営業時間 :平日 8:45~20:00土・日・祝 9:00~19:00

公式HP:興能信用金庫


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