能登の未来を印刷する。デジタルとアナログで地域に寄り添う石川印刷|七尾市

能登の美味しいお魚や海の魅力をぎゅっと詰め込んだ大人気のフリーペーパー『Fのさかな』をご存知ですか?実は、この素敵な冊子を作っているのが石川印刷さんなのです。創業から70年以上もの長きにわたり、能登の観光や産業を紙という媒体から支え続けてこられた石川印刷株式会社さん。震災という大きな苦難を乗り越え、「石川印刷に頼めば、何とかしてくれる」と地域から厚い信頼を寄せられるその秘密と、今年で創刊20周年を迎えた『Fのさかな』に込められた想いを、広報担当・安井様にお伺いました。

「能登のお魚、なぜ宣伝しないの?」から始まった大人気フリーペーパー『Fのさかな』の軌跡

石川印刷さんの玄関を入ると、まず目に飛び込んでくるのが、色鮮やかで美しいお魚の冊子やグッズの数々です。これが、全国的にも珍しい魚に特化したフリーペーパーFのさかな』です。

始まりは、ちょうど市町村合併が行われた頃のこと。それまで各自治体が発行していた広報誌が激減してしまったのだそうです。「それなら、自分たちの手で地域の魅力を伝える広報冊子を作ろう!」と、石川印刷の皆さんが立ち上がりました。その根底にあったのは、「能登の魚はこんなに美味しいのに、なぜ誰もそれを大々的に宣伝しないんだろう?」という、シンプルで熱い郷土愛でした。

ちなみに、誰もが気になる『Fのさかな』のFの意味を安井様に尋ねてみると、

「よく聞かれるんですが…」と笑いながら教えてくれました。
実は、答えは冊子を開いてすぐのページ、左上に控えめな文字で書かれているんです。
Fish
(魚)、Fresh(新鮮)、Friendly(親しみやすい)、Food(食)、Family(家族)、Fight(闘志)、Forest(森)などのF、そしてなにより、Fが能登半島の形を表すからということでした。確かにそうですね。

さかなについても、魚と肴、食材と料理を指すそうです

能登のぬくもりと、さかなの魅力をたっぷり伝えてくれる『Fのさかな』は、またたく間に評判を呼び、数々の賞を受賞するほどの人気コンテンツへと成長していったのです。日本タウン誌・フリーペーパー大賞殿堂入りを果たされています。

魚に詳しくないスタッフだからこそ作れる「読者目線」の誌面づくり

Fのさかな』を開くと、その専門的で奥深い内容に「社内に魚のスペシャリストがいるのか?」と思ってしまいます。しかし、安井様から伺ったのは意外な舞台裏でした。

「実は、もともと魚のことを詳しく知らない編集スタッフが、辞書や図鑑をひっくり返し、学者の文献を一生懸命読み込んで文章に落とし込んでいるんです」

あえて魚好きのプロが書くのではなく、知識のないスタッフが一から調べて書く。だからこそ、マニアックになりすぎず、専門知識がない読者でも「へぇ、そうなんだ」と素直に感動できる、分かりやすくて面白い誌面が生まれるのですね。

そんなこだわりが詰まった誌面作りのため、テーマ決めには並々ならぬ努力があります。編集会議でたくさんの候補を挙げても、最終的な決め手はその魚が手に入ったかどうか。お魚には旬があり、時期がずれたり、海が夏枯れの状態になったりすると、撮影したくてもお目当ての魚が手に入りません。そのため石川印刷さんでは、なんと1年前から仕込みを始めます。地元の鮮魚店さんや、金沢のJF(漁協)さんといった、地域の専門家たちの協力を得ながら、1年をかけて丁寧に写真を撮影し、翌年の旬の時期に合わせて記事を作成しているのだそうです。

最近では、温暖化の影響で北陸でも獲れるようになった南の方の魚「スマ」を特集したとのこと。「鰹みたいな顔をしていますが、身はマグロの中トロみたいで本当に美味しいんです。地元では馴染みが薄くても、今獲れている魚を紹介し、美味しい食べ方を提案することで、市場の方々の手助けにもなれば嬉しいです」と安井様は語ります。ただ魚を紹介するだけでなく、地元の漁業や市場の方の役にも立つという、地域密着の絆を感じます。

一冊の冊子作りが未来のプロを育てる。石川印刷が大切にする「社員教育」

石川印刷さんにとって、『Fのさかな』を作ることは、単なるメディア事業以上の大きな意味を持っています。この誌面作りは、社員教育の場でもあるそうです。

一冊のフリーペーパーを作るためには、企画、取材、写真撮影、編集、デザイン、DTP(紙面構成)の技術、そして出来上がったものの広報まで、信じられないほど多くの工程が必要です。これを、スタッフ一人ひとりが一通りすべてこなせるように育てていくのが石川印刷流。

「お客様の要望をどうやって形にするか、どのターゲット層に向けて作るべきか、実践を通して学ぶことができます。ここで培った技術があるからこそ、本業の印刷業務でお客様と向き合った時に、より深いご提案ができるんです」

現在、石川印刷さんの社員数は15名。震災後に環境が変わって離れられた方もおられますが、その分、残った一人ひとりが何でもこなせるマルチなプロフェッショナルとしてご活躍されているようです。
冊子の裏表紙でも紹介されていますが、2メートルもの大判和紙に直接印刷できる襖(ふすま)印刷といったユニークな商品にも、長年培われた技術と、鍛えられた発想力が活かされているのかもしれません。

被災後に立てた「のぼり旗」

そんな地域に愛される石川印刷さんも、202411日の能登半島地震では甚大な被害を受けました。安井様ご自身も、ご自宅が被災し、公費解体となりました。

社員全員の無事は社内SNSなどで確認できたものの、仕事始めに会社へ向かった皆さんが目にしたのは、想像を絶する光景でした。工場内は足の踏み場もないほど物が散乱した状態。本来ならクレーン車を使わなければ動かないはずの巨大な印刷機が、地震の激しい揺れで大きくズレ動いてしまっていました。※お写真は石川印刷様よりご提供頂きました。

しかし、石川印刷の皆さんは、前を向いて歩み始めます。「石川印刷は動いている!」という強い意志を示すため、懸命の片付けを行い、震災からわずか8日後の19日には、少人数体制ながらも営業を再開されたのです。

さらに営業の歩みを進める中で、会社の前に力強く掲げられたのは営業再開を示すのぼり旗でした。休業を余儀なくされていた同業者もある中、石川印刷は営業していると示したことで、復興関係の建設業者さんたちなどが、「名刺がなくては営業に回れない。名刺を印刷してくれ」と次々に駆け込んできたそうです。

さらに、仕事がまだ完全に戻らない時期には、その技術を支援活動に活かしました。TikTokInstagramなどのSNSを駆使し、印刷機が元気に動く様子等の明るい話題を発信。また、輪島でいち早く再開した飲食店さんのために、無償でショート動画を制作してPR活動をサポートしました。
「自分たちの持っている技術で、少しでも地域の役に立ちたかった」

 その姿に励まされた方も多いと思います。

便利さは取り入れつつ、お付き合いはどこまでも人間らしく。「困った時は石川印刷に聞けばいい」という安心感

石川印刷さんの最大の強みは、何と言ってもWEB、電子ブック、SNSAIチャットボットまで、デジタル分野も丸ごと一括で相談できることです。最近では物価高の影響で紙の印刷代が4050%も高騰することがあるため、コストを抑えたいお客様に向けて、電子ブックへの切り替えを積極的に提案されています。名刺やショップカードにQRコードを載せ、そこから電子ブックへ誘導するというスマートな動線づくりは、これからの時代に欠かせません。さらに、最先端のAIと契約し、プロンプトエンジニアとしてAIチャットボットの構築や教育まで手がけているというから驚きです。

これほど最先端のデジタル技術を持ちながらも、安井様が何度も強調されていたのがアナログな対面へのこだわりでした。

「ネットで自分でデザインして印刷するサービスが増えましたが、私たちの街には、それができないお客様もたくさんいらっしゃいます。私たちはメールでのやりとりだけでなく、地元ならではの距離感を活かして、直接お会いして原稿を一緒に見ながら密にコミュニケーションを取る進め方も大切にしています」

例えばホームページも、「作ったけれど5年間も更新していない」という放置型の会社が多いことに着目し、InstagramなどのSNSと連携させて最低限の情報だけをシンプルに管理できる「あえての放置型サイト」をお客様のご要望に合わせて提案します。「デジタルで便利な世の中だからこそ、人間味のある繋がりを大切に、顔の見える地元の会社としての安心感を提供したい」。「石川印刷に頼めば、何とかしてくれる」という地域からの言葉は、そんなデジタル技術と、どこまでも温かいアナログな信頼関係が結実した、最高の褒め言葉なのです。

創刊20周年記念グッズが予約販売中

そんな地域に寄り添い続ける石川印刷さんが発行する『Fのさかな』は、今年2026年、ついに創刊20周年の大きな節目を迎えました。この記念すべきアニバーサリーイヤーを盛り上げるため、現在、とっても素敵な20周年記念グッズが販売されています。

中でも大注目なのが、歴代の『Fのさかな』の表紙や、誌面を飾ったユニークで面白いキャッチコピーをあしらった20周年記念Tシャツやアクリルキーホルダーです。これらはすべて受注生産となっており、ちょうど今、予約販売がスタートしています。

Fのさかな20周年祈念特設ページ

さらに嬉しい購入特典として、グッズを購入された方は、今はもうどこを探しても手に入らない幻の初期のバックナンバーを、期間限定で電子ブックにて読めるようになるそうです。昔からのファンの方にとっても、最近能登の魚のファンになった方にとっても、たまらないプレゼントですよね。

また、3年に一度発行されている大人気の『Fのさかな図鑑』の最新作ボリューム5も、この20周年に合わせて前倒しで発行されました。こちらは初版限定で、なんと20周年記念ロゴマークが付いてくる特別仕様になっています。

紙を通じて、能登の心をつなぎ続ける

インタビューの最後に、安井様は「これからも能登に明るい話題を届けていきたいです」と、笑顔で語ってくださいました。

印刷の工程で出てしまう紙の端切れ(余り紙)を使って、可愛いメモ帳を制作されていました。こちらは、お客様へのプレゼントだそうです。このちょっとしたおもてなしからも、お客様との心の繋がりを大切にされてきたことが伝わってきました。

どんなに時代がデジタルへ移り変わろうとも、顔と顔を合わせる対面の温もりを忘れない石川印刷さんが紡ぎ出す言葉と紙、そしてお魚への愛は、これからも能登の復興を力強く支え、私たちの未来をパッと明るく刷り上げてくれるに違いありません。

同じ能登の発信者として、のとルネも石川印刷さんのこれからの歩みと、『Fのさかな』20周年を心から応援しています。皆さんもぜひ、記念グッズをチェックして、能登の海の恵みと石川印刷さんの熱い想いを感じてみてください。

石川印刷株式会社 企業詳細

住所  石川県七尾市本府中町ヲ
電話  0767-53-2545

受付時間 9:00-17:30 [定休日除く] 
公式HP
  https://ishikawap.com/

※創刊20周年記念グッズの購入は公式HP内、Fのさかな20周年特設ページから


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