能登で生き、能登から生み出す、 滝川さんが描くMADE IN NOTOの未来|七尾市

能登で仕事を続けること。
震災のあとも、この土地に暮らし続けること。
それだけでも、きっと簡単なことではありません。けれど、イリオスNOTO代表取締役の滝川さんは、苦しい時こそ支えてくれた人たちのことを思い出しながら、何度も踏ん張ってこられました。倫理法人会の教え苦難福門を胸に、本業を守りながら、新しいものづくりにも挑む。その姿からは、能登で生きることの厳しさと、そこに残る希望の両方が伝わってきました。 

「やめようかな」と思ったことも何度もあった

「途中でやめようかなと思ったことが何回もありました」

お話を伺っていて、最初に心に残ったのは、滝川さんのこの言葉でした。
さらりと話してくださいましたが、私はその一言に、これまでの時間の重みがぎゅっと詰まっているように感じました。

今でこそ、車のコーティングや防錆、フィルム施工、クリーニングなどを手がけるカーディティーリングの仕事を、地域に欠かせない仕事として続けておられる滝川さん。でも、独立当初は決して順風満帆ではなかったそうです。売上が伸びず、知り合いも少ない土地でのスタート。ご家族とも「どうする、どうするって、よく気をもみながらやりましたね」と振り返っておられました。 

それでも諦めなかったと言うと、辛いけど歯を食いしばって頑張り続けたというイメージを持たれるかも知れません。けれど滝川さんの場合は、誰かの支えを思い出して、常に前向きな気持ちで取り組み続けられたような印象を持ちました。

支えてくれる人がいたから踏みとどまれた

転機になったのが、倫理法人会との出会いでした。
最初は「少しの間入ろうかな」くらいの気持ちだったそうです。でも、そこで出会った先輩方の言葉や生き方に刺激を受け、少しずつ気持ちが変わっていったのだといいます。

滝川さんは、こんなふうに話してくださいました。
「車の仕事を依頼してくれたりとか、いろいろ助けてもらった」
「そうすると簡単に辞められなくなるじゃないですか」

この「辞められなくなるじゃないですか」という言い方が、なんとも滝川さんらしいなあと感じました。大げさな言葉ではないけれど、応援してもらったことへの感謝や、その期待に応えたいという思いがあったことがしっかり伝わってきました。

倫理法人会の教えに苦難福門という言葉があります。苦難に直面したときは、喜んで受け止め、自分を改めると、その先に幸せな道を開くきっかけになる、という考え方です。滝川さんのお話を聞いていると、この言葉はきれいごとではなく、本当に苦しい時に自分を支える灯りのようなものなのだろうと思いました。くじけそうになるたびに、この言葉や支えてくれる人の顔を思い出して、もう一度立ち上がる。滝川さんは、そうやって今につないでこられたのだと思います。 

好きな仕事を必要とされる仕事に育てる

滝川さんは、もともと車が大好きで、「こういう手仕事が大好きで、職人気質みたいな仕事がしたい」と思ってこられたそうです。実際、仕事のお話をされる時の表情はとても楽しそうで、こちらまでうれしくなってしまうほどでした。 

とくに力を入れてこられたのが、防錆です。能登では、潮風や雪の影響もあり、車の錆は身近な悩みのひとつ。滝川さんは「材料の選定と施工の仕方で、効果が全然違う」と話し、学びに行き、調べ、現場の声を聞きながら、地域に本当に必要な仕事として育ててこられました。 

印象的だったのは、「毎日目が覚めて、起きた瞬間ワクワクしてるみたいなタイプやもんで」「会社来るときワクワクしてて、仕事が楽しい」と話してくださったことです。好きだから続けられる、というだけではもちろんないはずです。でも、好きなことを、誰かの役に立つ仕事にまで育ててきた人の言葉には、やっぱり力があるなあと感じました。 

車をきれいにするだけじゃない、車を長く守る仕事

滝川さんが営むイリオスNOTOの本業は、カーディティーリングと呼ばれる仕事です。車のコーティングや防錆、カーフィルム施工、クリーニングなどを通して、車を美しく保ち、できるだけ良い状態で長く乗れるように整えていきます。整備や修理、販売とはまた少し違う、車の美しさ保護の両方を支える仕事です。

お話を伺っていて印象に残ったのは、滝川さんがこの仕事を、ただ車をきれいに見せるためのものとしてではなく、長く大切に乗るための仕事として捉えておられることでした。特に能登で必要とされる防錆にも力を入れ、材料の選定と施工の仕方にこだわり、同じように見える作業でも、より効果が出るように工夫されていることからもうかがえます。よりよい方法を学ぶために先進的な技術を取り入れている会社へ足を運び、修理工場や整備会社、ディーラーにも話を聞きながら、地域に本当に必要とされる施工を模索してこられました。その積み重ねが、今のイリオスNOTOの仕事につながっています。

工場内には道具や設備が整えられ、一台一台の車と丁寧に向き合ってきた時間が、そのまま空間に表れているようでした。

磨き上げられた車の美しさはもちろんですが、その奥には「この地域で車を長く大切に使ってほしい」という思いがある。そう感じると、滝川さんの本業もまた、能登の暮らしを支える大切な仕事なのだと、あらためて思いました。

震災のあと一番つらかったこと

能登半島地震の時、滝川さんご自身は志賀町のご実家で被災されました。自宅や事業所にも被害があり、断水のため不自由な生活も続いたそうです。家を直すこと、仕事を戻すこと、毎日の暮らしを立て直すこと。そのどれもが簡単ではなかったはずです。 

そんな中で、「一番つらかったことは何ですか」とお聞きした時、滝川さんは少し間を置いて、こう答えてくださいました。
「従業員さんが辞めたことが一番つらかった」

この一言に、私は胸が詰まりました。建物の被害や売上のことだけではなく、一緒に働いてきた人のことを一番につらいと語る。その言葉に、滝川さんの経営者としてのやさしさや責任感が、そのまま表れているように感じたからです。 

もちろん、現実は厳しかったと思います。それでも滝川さんは、支援してくれる仲間、仕事でつながってきた人たち、応援してくれる方々の存在を思い出しながら、使える制度を探し、新しいことにも取り組んでいかれました。「なんとか良い方向に進んでいる」。私は今回のお話全体を通して、そんなニュアンスを強く受け取りました。華々しい回復の物語ではなくても、踏みとどまりながら、少しずつ前へ進んでいく。その歩みこそ、リアルな復興なのだと思います。 

「能登でもやっていける」を形にしたい

今回、もう一つとても心に残ったのは、滝川さんが本業だけにとどまらず、能登から新しいものを生み出そうとしていることでした。

「能登でもやっていけるというのを見せたい」

この言葉には、強がりではない、静かな決意が込められているように感じました。人口減少や人手不足、先の見えにくさ。能登に暮らしていると、つい「これからどうなるんだろう」と不安になることがあります。けれど滝川さんは、そこで立ちすくむのではなく、自分の手で次の可能性をつくろうとしておられます。 

その一つが、転倒しないホースリールの回転台座付ポール。ご自身のお母様が水まきで苦労されているのを見て、「こうだったらもっと楽なのに」という発想から形になったものだそうです。

大きな発明という言い方より使う人にやさしい工夫と言った方がしっくりきます。そんな視点に、滝川さんの人柄がよく表れている気がしました。 
商品はこちらの記事でも詳しく紹介しています。

もう一つが、旗や反物などに折れ目をつけずにしまえるまきまきくんです。仕事で扱う資材の巻き取りや保管の工夫から発想が広がり、国旗や学校の旗、反物などもきれいに収納できるよう考えられたものだといいます。

特許申請にも取り組んでおられ、「能登で作って全国に売りたい」という思いも聞かせてくださいました。 

MADE IN NOTOを、ここから

「能登に住み続けながら、能登から、MADE IN NOTOを全国に発信したい」
この言葉を聞いた時、私は、ああこれが滝川さんの今の願いなんだなと思いました。都会にあるものをそのまま持ってくるのではなく、能登にいるからこそ見える困りごとや、能登で暮らしているからこそ浮かぶ発想を形にしていく。そこには、この土地で生きてきた人にしか出せない説得力があります。 

滝川さんの歩みは、派手な成功談ではありません。むしろ、何度も迷い、何度も苦しみ、そのたびに人に支えられて、また少し前を向く、そんな積み重ねだったのだと思います。だからこそ、私はそのお話に強く心を動かされました。うまくいっているから希望があるのではなく、苦しい中でもやめずに続けている人がいること自体が、希望になる。今回の取材を通して、そんなことを教えていただいた気がします。 

能登で生きること。能登から生み出すこと。
その両方を、言葉だけでなく実際の歩みで見せてくれているのが、イリオスNOTO代表取締役滝川さんなのだと思います。 

苦難のたびに支えてくれた人を思い出しながら、能登で踏ん張り、能登から未来の種を生み出していく。滝川さんの挑戦は、今日も静かに、あたたかく、MADE IN NOTOの可能性を育てています。

イリオスNOTO 企業詳細

住所:石川県七尾市八幡町ロ25-1

電話:0767-57-3040

公式HP https://iriosu-noto.com/


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