能登が誇る巨匠の軌跡を辿る!「長谷川等伯展~信春から等伯へのあゆみ~」|七尾市

安土桃山時代、京都の画壇で圧倒的な存在感を放ち、日本絵画史にその名を刻んだ大巨匠・長谷川等伯(1539~1610)。実は彼が、ここ能登国七尾の出身であることをご存じでしょうか? 

現在、石川県七尾美術館では、毎年の恒例となった展覧会「長谷川等伯展~信春から等伯へのあゆみ~」が開催されています。等伯の故郷である七尾美術館での長谷川等伯展は、なんと今年で記念すべき30回目の開催。

今回は、七尾初公開の貴重な作品や、約20年ぶりに全8幅が一堂に会する注目の展示など、見どころ満載の現場を取材してきました。学芸員の河野さんに教えていただいた深掘りポイントや、限定グッズの情報をお届けします。 

30回目を迎える「長谷川等伯展」今回の見どころは?

 

若い頃は信春(のぶはる)と名乗り、能登で絵仏師としてスタートを切った等伯。30代で京都へ上洛すると、名だたる文化人たちと交流を深め、やがて長谷川派を結成して豊臣秀吉の御用や大寺院の障壁画を手掛けるまでに上り詰めました。 

今回の展覧会は、シリーズ30回を記念し、「信春」から「等伯」へと至る画業の歩みと、彼が天下の絵師へと成長していくドラマにスポットを当てています。 

館内は3つのテーマに分かれており、計24点もの貴重な作品をじっくり鑑賞できます。それでは、各展示室を巡ってみましょう! 

第1展示室 《テーマ1》「絵仏師・信春-緻密・色彩の妙」

写真提供:石川県七尾美術館

武士の子として生まれた等伯は、幼少期に染物屋を営む長谷川家に養子に入りました。養父の宗清も絵仏師として活動しており、その下で技を磨いた等伯は信春の名で数々の仏画を描き始めます。 

会場でまず目を奪われるのが色彩の美しさです。若い頃から、能登と京都を行き来していた信春は、良質な絵の具を入手することができたため、これほど鮮やかな色彩表現が可能だったと考えられているそうです。 

目録からピックアップして作品をご紹介します。

●『宝塔絵曼荼羅図』(長谷川宗清/蓮乗寺蔵)

養父・宗清による作品。赤や緑、金を用いた色彩の鮮やかさと、緻密で繊細な線描が特徴です。宗清と信春2人のハンコやサインがあり結縁の意味合いや信春との共同制作ではないかとも言われており、親子の絆や技の継承を感じさせます。 

●『愛宕権現図』(長谷川信春/石川県七尾美術館蔵)

学芸員・河野さんが教えてくれた見どころは、リアルに表現された手!

手のひらのふくらみがリアルに表現されており、立体感と実在感が伝わってきます。20代と30代の作品と比較すると、彼のさらなる成長ぶりがうかがえます。 

●『十六羅漢図』(長谷川信春/霊泉寺蔵)

全8幅すべてが公開されるのは、なんと約20年ぶり!

 1幅に2人ずつ羅漢(釈迦の高弟)が描かれており、ズラリと並ぶ様は圧巻の一言です。 

●『海棠に雀図』(個人蔵)

能登時代には仏画だけでなく、鑑賞目的の絵も手掛けていました。可愛らしい親子のスズメが描かれており、信春の温かなまなざしがうかがえます。 

第2展示室 《テーマ2》「水墨画家・等伯-大胆・濃淡の妙」

50代以降、等伯と名乗り出してから数々の水墨画の名作を生み出しました。この展示室では、彼が本格的に水墨画へ取り組むようになり、天下に名を馳せるまでのダイナミックな進化を体感できます。 

写真提供:石川県七尾美術館

七尾初公開作品や、作品の細部に宿る魅力を発見!

目録からピックアップして作品をご紹介します。

●七尾初公開!『四愛図襖』(長谷川等伯/名古屋鉄道株式会社蔵)

中国の文人たちが愛した4つの花(梅・蘭・蓮・菊)を題材にした作品。梅を愛した林和靖(りんなせい)、蘭を愛した黄山谷(こうさんこく)、蓮を愛した周茂叔(しゅうもくしゅく)が描かれています。黄山谷の絵の横などには、かつて改変された歴史を物語る丸い引手の跡が残っており、歴史のロマンを感じさせます。 

●『陶淵明愛菊図屏風』(長谷川等伯/個人蔵)

菊を愛した陶淵明(とうえんめい)を描いた屏風。描かれている岩肌には、斧で叩き割ったような鋭さを表現する「斧劈皴(ふへきしゅん)」という技法が使われています。この岩の描写こそ、等伯の大きな特徴です。 

●『高士騎驢図屏風』(長谷川等伯/高桐院蔵)

60代の頃の作品とされ、丸みを帯びたやわらかな筆遣いが非常に印象的です。60代の水墨画作品は、濃い墨を使って直線的で鋭い表現がみられるそうなのですが、この表現の差異は手本にした作品の違いとも言われており、晩年に至っても様々な表現を追求し、吸収しようとする姿勢がうかがえるとのことです。 

また、『達磨図』に押された「袋形印」や『陳希夷睡図』に見られる狩野派風の「鼎形印」など、作品に押された印章の違いを比べるのも通な楽しみ方です。ぜひ会場で探してみてくださいね! 

※会場内には、日本水墨画の最高峰・国宝『松林図屏風』の高精細複製パネル(石川県七尾美術館蔵)も参考展示されています。

 通路にも注目!歴代ポスターで振り返る「30年の歩み」

 

第2展示室から第3展示室へ向かう通路にも、見逃せないスポットがあります。

壁一面に飾られているのは、七尾美術館でこれまでに開催されてきた歴代長谷川等伯展のポスターたち。

シリーズ30回という歴史の深さを感じられるとともに、「昔見に行ったな」「この年の展示も観たかった」など、等伯ファンにはたまらない空間になっています。移動の際もぜひゆっくり鑑賞してみてくださいね。 

第3展示室 《テーマ3》「長谷川派一門-等伯の後継者たち」

京都で一流の絵師となった等伯は、4人の息子や多くの弟子たちとともに「長谷川派」を結成しました。第3展示室では、師である等伯の技と魂を継承した弟子たちの作品が飾られています。

写真提供:石川県七尾美術館

目録からピックアップして作品をご紹介します。

●『松・杉・槇図屏風』(長谷川等誉/妙成寺蔵)

等伯が京都に上洛した後、能登で長谷川派として活動していたとされる等誉の作品。等伯の画風を貪欲に学んでいた姿勢が伝わってきます。 

●『羅漢図屏風』(長谷川左近/個人蔵)

等伯の4男・左近(等重)による作品。岩の描き方に、父・等伯の技法が見事に受け継がれています。 

会場では、等伯本人の絵パネルなどと比較しながら鑑賞できるよう工夫されています。弟子たちがどれほど等伯など様々な絵を研究し、自分の絵に活かしていたかという視点で見ると楽しめます。 

学びを止めず、進化し続けた「等伯」の生き様

今回の取材を通じて強く感じたのは、長谷川等伯という絵師の生涯学びを止めない探究心でした。 

能登の絵仏師 信春として緻密な技を磨き、京へ上洛してからは特に水墨画に果敢に挑戦し、歳を重ねてもなお水墨画の表現を追求し、かつ深く進化させていく。展示を順に巡ることで、彼の生き様そのものをワクワクしながら追体験することができました。 

そして、その背中を追いかけた弟子たちの情熱も含め、能登が生んだ天才の凄みをあらためて実感できる素晴らしい展覧会です。県内の方はもちろん、県外の美術ファン・歴史ファンの方にも、ぜひ足を運んでいただきたいです! 

ミュージアムショップで「限定グッズ」を手に入れよう

鑑賞の余韻に浸ったあとは、ショップコーナーへ立ち寄るのをお忘れなく!

長谷川等伯展ならではの限定オリジナルグッズが多数用意されています。 

◆ライターイチオシ!楓図タンブラー

 名作『楓図』がデザインされた贅沢なタンブラー。使うのがもったいなく感じてしまうほど美しいですが、これでお気に入りのドリンクを飲む時間は最高に贅沢なひとときになりそうです!

◆日常使いにぴったりのTシャツ&トートバッグ

等伯の作品がプリントされたおしゃれなデザインで、日常にアートを取り入れられます。 

そのほか、定番の絵はがき、一筆箋、クリアファイル、色紙、そして今回の展覧会を網羅した図録も販売されています。旅の思い出や、大切な人へのお土産にぜひお気に入りを見つけてみてくださいね。

 

展覧会をもっと深く楽しむ!「関連イベント」情報

会期中は、学芸員さんによる講座やギャラリートークなどの関連イベントも開催されます。より深く等伯の世界を知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。 

■ 等伯七美講座《聴講無料》

学芸員の方々から、出品作品の魅力や等伯の生涯について詳しく学べる講座です。 

日時:10月3日(土)14:00~15:00(講師:北原洋子 学芸員/内容:等伯の生涯)

会場:石川県七尾美術館 アートホール楽屋

定員:各日20名(事前申込制・定員になり次第締切)

申込:電話受付(受付時間 9:00~17:00) 

 

■ ギャラリートーク

展示室で実際の作品を前に、学芸員さんの解説を聞くことができます。 

日時:10月11日(日)14:00~14:45

会場:展示室(※参加には観覧券が必要です)

講師:七尾美術館 学芸員 

開催概要

  • 展覧会名:長谷川等伯展~信春から等伯へのあゆみ~
  • 会期:令和8年9月19日~10月18日
  • 休館日:会期中は無休
  • 会場:石川県七尾美術館(石川県七尾市小丸山台1-1)
  • 観覧料:一般1,000円(900円)、大学生350円(300円)、高校生以下無料
  • 展示作品:計24点

 能登の豊かな風土が育んだ美の真髄を、ぜひ七尾美術館で体感してください。

取材協力、石川県七尾美術館

 


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